民主主義の敵、記者クラブ

清谷 信一

財務次官のセクハラ問題について以下の記事を書きました。


この問題はセクハラではなく、記者クラブの存在とその体質です。
クラブ以外のメディアやジャーナリストを排除して役所と癒着して情報を取る、あるいは下賜されるのを仕事としている記者クラブの閉鎖的かつ、当局の意向を忖度する姿勢がこういうセクハラを招いたわけです。

まあ、ざっくり言えば、ジャーナリストがセクハラされたよりもキャバ嬢がセクハラされたようなものです。
何しろいくら専門知識があって、実績がある美人のフリーランスの記者ならば次官と「親しく」なって取材するなんてことは普通できませんから。

フリーランスであればそもそもセクハラ以前、取材機会すらありません。

こういう記者クラブが、官僚が忖度しているのだと連日報道しているのはセルフパロディみたいなものですが、自覚がないようです。
だったら自分たちも、役所や政治に対する忖度の元凶となっている記者クラブを改革するなり、解散すれば宜しいのですが、楽に情報がとれるシステムを手放したくない。

まあ、こういってはなんですが、シャブ中が覚醒剤止められないと同じです。

もうひとつ問題なのが、記者クラブの番記者は専門性が無い人が殆どです。そもそも興味がなくても会社に派遣されるわけです。それで我々専門記者を排除している。例えば東洋経済のようなビジネス誌の記者も財務省、国交省、経産省などの記者会見やレクチャーにはでられません。

で、記者会見に出ているのは専門知識のない番記者ばかりです。

新聞、テレビは読者視聴者に広く、浅く伝えるメディアであり、専門誌は狭く深い読者に伝えるメディアです。
極論言えば、テレビ、新聞に専門的な視点は必要ありません。

記者クラブに専門記者が入れれば、テレビや新聞も報道する、しないは別として、専門記者との交流によって別な視点、深い知識を得ることができます。
また権力の監視という視点でもはるかにマトモになります。

はっきり言って、ただの民間の任意団体が当局の取材機会を独占していることに、何の法的な根拠はありません。
また国や役所が記者クラブを民間の報道機関あるいはジャーナリストの代表として、彼らだけと付き合うという法的根拠もこれまたありません。

つまり国と記者クラブは法的な根拠がないのに、他の報道機関、ジャーナリストを排除しています。
これでは法治国家とはいえず、中国や北朝鮮を笑えません。

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自の機動連隊の機動戦闘車にはオーストリア製60ミリ迫撃砲が搭載され、使用時にはクルーが下車して射撃するという、ユニークというよりも胡乱な運用をするとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年4月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。