憲法9条2項削除論者が、持論を封印せざるを得ないのが政治の現実

自民党憲法改正推進本部サイトより:編集部

まあ、これが政治だ、と言っておいた方がいいだろう。

自民党の国会議員の方々が正直だったら、自民党の憲法改正草案に沿ってそれぞれに憲法改正論議を進められるはずだが、石破さんを除いて自民党の国会議員の大半は現時点では憲法9条2項削除論は封印されるようだ。

絶対に通りそうもない憲法改正の議論は当面はしない、と決めておられるようである。

本音は隠して、まずは通りそうな憲法改正を実現し、そのうえで自分たちが考える理想的な憲法改正を実現すべく努力する。いわば、2段階の憲法改正を考えているということだろう。

憲法改正を戦略的に考えられる方々は、しばしばこういうことをやる。

護憲の壁を少しづつ切り崩していく、という手法である。

しかし、どうも今の状況は、こういう迂回的な手法を弄しても憲法改正には届きそうにない。
新聞社によって大分世論調査の結果が違うようだが、どうも世間の空気は憲法改正に消極的になっている。

政権に対する信頼度が大きく低下してきているから、自民党の皆さんがいくら憲法改正を訴えても世論が付いてこなくなっている。自民党の支持率はそう大して変化していないが、安倍内閣の支持率が逆転上昇する可能性は殆どない。

こういう時は、二段階憲法改正などという姑息な手法を取っても意味がない。

石破さんのように、玉砕覚悟で憲法9条2項削除論を頑固に主張するか、憲法9条には一切手を触れないかの二者択一になりそうである。私は、どちらかと言うと憲法9条には手を触れない方に軍配を上げる。

多分、この通常国会では憲法改正論議は1ミリも前に進まないはずである。

憲法改正を本当に志向されるのだったら、まずは国民投票法の改正問題から手を付けた方がよさそうである。

仕切り直しですね。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。