資格試験その他の試験で必要とされる憲法の大枠は、以下のとおりシンプルなものだ。
まず、頂点に「個人の尊厳」(憲法13条)がある。
国家や社会や家といった枠組みに囚われない、個々人としての国民一人一人が最も尊重されるという考えだ。
個人の尊厳を図るために、平和主義、民主主義、基本的人権の尊重という三大原則が置かれている。
平和が守られず戦争状態だと、強制的に軍務に従事させられたり財産を没収されたりするので、個人の尊厳が大幅に制限される。
そこで、憲法前文と9条で平和主義を規定した。
民主主義というのは国のシステムの問題で、主権者である個々の国民の意思によって国を統治するというものだ。
国民の権利義務を規定する法律は、国民の代表者で構成する唯一の立法機関である国会で作られる。
行政権は、国会で作られた法律を執行する機関であり「法律による行政の原理」を決して踏み外してはならない。
司法権は、個別具体的な紛争に関し、(国会で作られた)法律を適用して最終的な解決を図る機関だ。
基本的人権の尊重という点では、憲法上に様々な人権規定が並べられて保障されている。
従来からの「国家からの自由」だけでなく、社会保障のように「国家に対する自由」も含まれている。
基本的人権の中でも、表現の自由のような精神的自由は、民主主義という統治システムを機能させるために不可欠の権利とされている。
表現活動等の精神的自由が大幅に制限され偏った情報しか与えられないと、選挙で代表者を選ぶ際に正しい判断ができなくなる。
主権者である国民の意思が国政に正しく反映されなくなってしまうと民主主義システムが機能しなくなる。
よって、精神的自由を制限する法律や行政活動の合憲性についての裁判所の審査は厳しくなっている。
基本的人権の中には、以上のように自分たち国民の民主的統治システムを維持する重要な権利だけでなく、経済活動などを自由に行って自己実現を図る権利が保障されている。日本全国を金太郎飴にして地域の実情を無視すると、地域の伝統、文化や風習を無視、抹殺してしまう恐れがある。結果的に、その地域に住む住民の尊厳が損なわれる結果につながりかねない。
そこで、憲法は地方自治について規定し、地域住民による一定範囲の自治を保障している。
憲法の条文は103条しかない。
それぞれの条文を以上の構造にあてはめれば、最低限の試験対策になる。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。