こんにちは!肥後庵の黒坂です。
時事通信のニュースによると、農林水産省が日本産フルーツの海外流出を防止する対策の強化に乗り出したようです。
ネット上のコメントを見ると、
「すでに色んな品種が流出した後の対応で、着手するのが遅すぎる!」
「手遅れになってからようやく重い腰を上げるのはなんとかならないのか」
「もう手遅れだ!」
といった嘆きの声で溢れています。確かに過去の流出事件のダメージはゼロではありません。それにより、日本の輸出機会が奪われた事も間違いないでしょう。しかし、本当に今さら手遅れでどうしようもない状態なのでしょうか?冷静に考える必要があります。
日本のフルーツ海外輸出は本格化したばかり
輸出額の推移は『なぜ近年になって台湾と香港に日本のフルーツがウケているのか?』という記事で書かせて頂いたのですが、日本の高品質フルーツが海外に注目され、急激に伸びてきたのはここ数年間の話に過ぎません。オランダやアメリカといったフルーツをドル箱にしている国々と比べると、まだまだ輸出額のケタが1つ・2つ足りません。
「フルーツが近隣国に流出し、輸出機会が奪われた。もう手遅れだ」という声が非常に多いのですが、日本における現状のフルーツ輸出規模を考えると、そもそもまだ入り口にしか立っておらず、手遅れなどではありません。もちろん、先般の韓国へのいちご流出はとても残念なことではありますが、輸出が本格化してきたこのタイミングで対策を講じる事になったのは良いことではないでしょうか?
日本政府は対策を何もしなかったわけではない
「日本政府は動きが遅く、常に対応が後手だ」と言っている人も多いですが、何もしなかったわけではありません。『多くの人が勘違いする「韓国いちご問題」3つの誤解』で詳しく書いているのですが、韓国いちご流出問題の際、日本政府は韓国が日本へ輸出するのを禁止にし、更にロイヤリティの支払いを要求するというアクションを取っています。日本に売るつもりでいちごをせっせと作っていた韓国はこの対応に仰天し、韓国内は日本へ売れなかったいちごが溢れてしまったことがありました。決して何もしてこなかったとか、対応が悪いということはないと思います。
今回の報道は「これまで以上に対応を強化する」と言っています。詳しくはまだ発表されていませんが、私個人の見解としてフルーツ流出が起こった時の対応や品種登録の推進になるのではないか?と考えています。今年4月には
今年4月には海外での無断栽培差し止め請求の費用補助にも乗り出した。
こうした動きもあります。これは「海外にフルーツや苗木を輸出し、無許可で現地栽培などの問題が起こった時には国が支援します」と言っているのです。
民間や県レベルでは対策が進んでいる
フルーツ輸出とは一般的に海外に果実を発送するものですが、日本の高品質フルーツを海外で栽培、販売することで許諾料収入などが期待できるものもあります。実際、1990年に日本で「デコポン」として商標登録したものを、韓国の済州島で栽培し、「漢拏ボン(ハルラボン)」として販売しています。現地の韓国人はハルラボンを「元々日本からやってきたデコポン」ということを知らずに食べている人も多いようです。
さて、フルーツ海外輸出について、民間や県レベルではすでに対策推進の動きがあります。品種登録の手続きを代行する業者や、国より早く県が補助を進めているのです。
福岡県は人気のイチゴ「あまおう」の品種登録を国の補助制度が始まる前に県費を使い、中国と韓国で行った。県農林水産政策課は「国が普及と啓発に本腰を入れたことで、全国で登録の流れは進む」とみている。
とあり、福岡県ではあまおうの品種登録をすでに中国と韓国で行っています。ここに国が本腰を入れて対策に乗り出したとあれば、担当者のコメント通り全国で海外フルーツ輸出に向けた動きが加速することでしょう。とても素晴らしいことだと思います。
次に狙われているのはりんごや桃
過去に日本のフルーツが海外に流出したのは、先日の韓国いちごだけではありません。
今やらなければいけないのは、第2・第3の流出を防止することです。例えばりんごは日本のフルーツ輸出額ぶっちぎりトップの大人気果物です。
近年のりんごの輸出額の伸びは目覚ましいものがあります。日本のフルーツをよく買ってくれているお得意様は台湾・香港・シンガポールといった国々ですが、韓国はこうした国々へフルーツ輸出を積極的に行っており、日本とシェア競合している状況です。
もしもここでりんごを盗られるようなことがあれば、フルーツ輸出の最大のカードを取られてしまうことになるわけです。何があってもりんごなどの果物を盗まれるわけにはいきません。
国の対策推進がその防止策の第一歩となることを心より願っております。