初心者に解説。株のすべては売りのタイミングで決まる

尾藤 克之

写真は書籍画像。

「いまY証券が、1株120円で○株を売りに出している。朝から投売り状態だ。ここは、あえて指値でいって成立したらナンピン買いだな」。株で大損しないためには、投資をはじめる前から「株式投資のルール」を理解しておく必要がある。とくに初心者の場合、失敗する人の多くは、注意すべきことを理解していないことが多い。

たとえば、自己資金以上のものを投資にまわさないこと。信用取引などはリスクが大きいので控えたほうが無難。1つの銘柄に張りすぎると暴落した際のリスクがある。今回紹介するのは『7日でマスター。株チャートがおもしろいくらいわかる本』(ソーテック社)。著者は、梶田洋平さん。株勉強.com、Fastbook(出版社)の代表をつとめている。

投資前に決めたプランが正しい

梶田さんは、「投資前には多くの人が、○○円になったら利益確定をするいったようなプランを考えているもの。ところが、株価動向を見ているうちに相場が良くなさそうだから少し早めに利益確定しておこう。今回の損切りは大きめにしようというように、勝手にこのプランを変更してしまうことがある」とプラン変更のリスクを問題視する。

「これはやめるべきです。ほとんどのケースで株を保有していないときほうが客観的で正しい判断ができているので、株を保有している時の判断はどうしても精神的に楽な判断になりがちだからです。投資前のプラン通りに取引すべきですが、例外があるとすれば何かしらのニュースが起きた時でしょう。」(梶田さん)

「例えば突如いいニュースが出た時には利益確定のラインを引き上げることを検討してもいいでしょう。逆に、よくないニュースが出て株価が下落し始めた際にはその時点で売却するのも一手でしょう。実は買う前の判断が正しいケースが多く、株の保有中に判断しすると多くの場合、損は大きく、利益は小さくなってしまいがちです。」(同)

保有している銘柄にサプライズのニュースが起きたケースなどを除いて、買う前のプラン通りの取引を心がけたほうが良さそうである。

「いよいよ投資段階になりました。どんな気持ちになるでしょうか?それはやっぱり、『稼いでやるぞ』って気分ですよね。成果を発揮するときですから、気持ちが前のめりになっていることと思います。この『稼ぐぞ!』という感情は、学習段階では良いのですが、実際に取引していく段階になると不適切な感情です。なぜなら、感情による取引をしてしまう恐れがあるからです。」(梶田さん)

「良いスタートを切るために必要なのは具体的な資金計画です。スタートダッシュを決めることができれば勝ちやすくなります。着実に勝利に向かうための資金戦略を学習しておきましょう。資金計画について考えておくことで良いスタートを切ることができますが、資金計画が立たない場合はなにもしないほうが無難です。」(同)

株は買うよりも売る方が難しい

株は売却することで一つの取引が完了する。株は買うよりも売る方がよっぽど難易度が高く、最終損益に影響を与え易い。「いつ売るか」、「なぜ売るか」の根拠をはっきりさせなくてはいけない。最終損益に大きく影響を与えるのが売却戦略になる。

「株は買って終わりではありません。株を買った後の対応こそが成否を分けます。いつ売ればいいのかって難しいですよね。損の時もあれば利益の時もあります。売却するときはいくら損するか、いくら利益になるかを計算してしまうものです。」(梶田さん)

「買いのタイミングに比べて売りのタイミングは難易度が高いと頭に入れておいてくださいね。『株なんていつ買っても同じ。売りのタイミングでこそ勝敗を分ける』と言い切る投資家もいるぐらいですから。」(同)

本書は、みずほインベスターズ証券(現みずほ証券)で、テクニカルアナリストとして活動してきた、梶田さんのテクニック本になる。

尾藤克之
コラムニスト