トランプ大統領は、今度の米朝首脳会談において、拉致問題を取り上げ、北朝鮮に解決を迫ることを約束している。これは先の安倍総理の訪米の成果である。
しかし、非核化とは異なり、これは米朝両国にとって最優先課題ではなく、解決が絶対条件ではないと思われる。つまり、北朝鮮が文書での公約を迫られない以上、拉致問題に関しては「善処する」といった口頭でお茶を濁すことに留まる可能性がある。
もともと犯罪当事者の北朝鮮からすれば、解決しようと思えば明日にでもできる話なのに、誠意ある対応をまったく取ろうとしない。許しがたい連中だが、ただ日本側も、米国にまかせきりだったり、口先で非難したりするばかりでは、ちと能が足りない。
そこで日本は何か実効性のある策を打っておかねばならない。
米朝首脳会談で核放棄に合意したら、IAEA又米軍の査察チームが北朝鮮国内を調べて回ることになるが、私はそこに「拉致被害者調査チーム」を別働隊として加えたらどうかと思う。つまり、核査察権を盾に拉致被害者の行方を調査するわけだ。
しかも、「日米欧合同」の国際チームにする点がポイント。
拉致被害者は日本人だけではない。仏・伊・蘭の市民も拉致されている。アメリカ人もいるらしい。一説によると14カ国ともいう。だから、日本だけが提案するのではなく、根回しして、ヨーロッパの国々からも提案させるようにする。
もう茶番はうんざりだ、今度はこちらから押し入ってゆけ
かつて、小泉内閣の時代、田中均アジア大洋州局局長が「日朝合同の調査委員会を作って拉致被害者を調査すべき」などと提案したことがある。
調査も何も、北朝鮮は、拉致した日本人を特殊な施設で隔離し、管理している。つまり、当時なら金正日、今なら金正恩が返すと決断すれば、即解決する問題である。
それを当の誘拐犯と共同で調査しようなどと提案をする被害者が、どこの世界にいるのか。田中均は自分の子供が誘拐されたら、誘拐犯にそんな提案をするのか。自国民を誘拐され、主権を蹂躙された側が猛然と抗議するどころか、こういう欺瞞を平然と口にして恥じない。こんな人間が外務省の局長というのだから、日本の外交は根から腐っている。
その後、北朝鮮は拉致被害者の“再調査”をすると称して「特別調査委員会」なるものを立ち上げ、制裁解除の取引材料とした。だが、結局、何もせず、解体した。
こんなふうに、北朝鮮は、拉致被害者たちと日本を愚弄し続けている。
だから、もう、相手にするだけ時間の無駄だ。米朝首脳会談で北朝鮮が文書で解決を公約する期待は望み薄だ。金正恩は「約束する」くらい言うかもしれないが、信用して実行を待つ必要はない。今度はこちらから押し入ってまで調査すべきなのだ。
幸い、合意に漕ぎつけたら核査察は確実に実施される。核物質自体はどこにでも隠匿可能なため、事実上、査察チームはどんな施設にでも立ち入ることができる。
それゆえ、日米欧合同「拉致被害者調査チーム」を査察団の一員に混ぜ込めば、たとえ北朝鮮の解決の公約がなくとも、自力で拉致された人々を救い出す道が開ける。
むろん、北朝鮮当局が邪魔をしたら、「核査察を妨害した」と見なされる。それが何を意味するか分からないわけではあるまい。だらか、この措置は、北朝鮮にとって「恥部を暴かれるか、それとも合意違反と見なされるか」という、きつい選択を強いるものだ。
ただし“レッドチーム”の韓国はお断り
日本とフランスが一緒に頼めば、トランプ大統領も断ることはできないはずだ。だいたいアメリカ人も拉致されているのだから、これは自身の問題でもあるはずだ。
トランプ氏はビジネスマンでもある。安倍総理も胆力があるなら「イージス・アショア」などの数千億円の兵器商談を人質にするくらいのことはしてほしい。
これが鞭だとしたら、飴も必要。捕らわれた人々の発見・解放に繋がれば、すべてトランプ氏の手柄ということにしたらいい。「長年、独裁国家に監禁されていた西側の市民たちを解放した」という話題は、いかにもアメリカ人好みで、トランプ氏は一躍全米(いや全世界か)のヒーローになれる。中間選挙で大躍進間違いなしだ。
ちなみに、チームに韓国人は混ぜないほうがいい。つまり、韓国人の拉致被害者は調査対象外とする。それは朝鮮人同士の内輪の問題で、われわれが関わることではない。
というわけで、私から政府・安倍政権への提案である。
日米欧合同「拉致被害者調査チーム」を立ち上げ、核査察を機に、今度はこちらから北朝鮮へ押し入っていこう。この「機」を逃さないようにすべきだ。
【*以下筆者サイトの関連記事等】
「今度のアメリカの戦争のやり方は怖いくらいに上手すぎる パート2」
(フリーランスライター・山田高明 ブログ「フリー座」運営)