RE100なら何でも良いのか?事業者と個人の環境価値は異なる

薫風の5月、皆様いかがお過ごしですか。

さて今、太陽光発電をめぐっては二つの正反対のムードが漂っていて、日本人のコンセンサスが形成されないカオス的状況にあります。

一方は、太陽光発電=迷惑施設的なネガティブな雰囲気です。これは全発電量を1kWh46円で20年間買い取るという菅直人民主党政権の遺物、固定価格買取制度(FIT)によるものです。住宅用は余剰分で10年間しか売れないなのに、事業用は全量20年で買い取る、しかもどこで作っても、同じ値段で買い取るので、初期参入者は大儲けし、バブル的様相を繰り広げました。その遺物として山梨県北杜市の別荘地の山の斜面や、九州など土地の値段が比較的安くて日射量が高い特異点に事業者が集中し、行きすぎた開発を引き起こし、景観問題や安全問題など地元住民とのいざこざを引き起こします。また、土地の値段が安いところは、得てして需要地から遠いので、送電線を引っ張らなければならず、「送電線混雑」問題を引き起こします。こうした業者の超過利潤は再エネ賦課金という形で、一般市民に転嫁され問題となっています。

じゃあ、太陽光をバッシングするかというかというとそうでもありません。パリCOPを契機として、太陽光に対して順風が今、ヨーロッパから日本に吹き寄せています。その一つに「RE100」という国際的なムーブメントがあります。英国ブレア元首相の提唱で、ロンドンに拠点置く国際環境NGOのThe Climate Group(TCG)が2014年に始めました。

The Climate Groupは今では、英国の他、米国、インド、中国、香港などの支部を置き、世界中から数多くの企業や州政府、市政府が参画しています。RE100には、2018年1月28日時点で、世界全体で122社が加盟。この122社には、食品世界大手スイスのネスレ、家具世界大手スウェーデンのイケア、アパレル世界大手米NIKEなど、いわゆるグローバル企業が含まれます。

日本企業でも、リコーが2017年6月に加盟したのを皮切りに、アスクル、積水ハウス、ワタミ、イオンが加盟しています。RE100に加盟するためには、「ある時期までに使用電力を再エネ100%にする」と宣言するとともに、再エネ電気の調達計画をRE100事務局に提出して、審査を受ける必要があります。

RE100に加盟するグローバル企業が増え続けているのは、環境・社会・企業統治を重視するESG投資が増えているからです。ESG投資の運用額はこの5年で2倍に増えたと言われ、既に世界の投資の4分の1を占めているということです。サステナブル経営は、大きなブームになっていて、RE100に参加し、市場に消費者にアピールすると、ESG投資を呼び込むことができ、「エコに前向きな企業として」株価が上がるといったサイクルです。

使用電力を100%再エネにするためには以下の3つの方法があリます。(1)自分で再生可能エネルギーを発電する、(2)再生可能エネルギーで発電した電気を買う、(3)再エネ証書を買う。

一方で、太陽光発電を行う主体には大きく分けて二種類あります。それは、事業者が業として行う大規模メガソーラーと、個人が住宅の屋根の上などに設置する小口ソーラーです。では、RE100企業は、どちらの電気を買うでしょうか。

普通に考えれば、事業者から買います。なぜなら、大量に購買できるし、単価も安いからです。個人が設置する太陽光は、一つ一つが小さいし、取りまとめるのが面倒だし、コストもかかります。だから、市場競争の原理によって、大規模に乱開発されるメガソーラーが残って、個人住宅の太陽光は廃れていくことになります。こ「エコに前向きな企業」が、「乱開発」を促進し、送電網への負担を重くして行き、個人が善意で行う住宅の太陽光発電を市場から締め出して行くのです。それは大変理不尽なことだと思いませんか?

私が、声を大にして言いたいのは事業者の生み出す環境価値と個人の環境価値は等価ではないということです。個人の生み出す環境価値にはプレミアムがもともと付いているのです。もちろん、個人が住宅に太陽光発電をつけるのには様々な理由があるでしょう。お金儲けかもしれない。でもそうじゃない人が多いのではないでしょうか。

そもそも環境価値とは一体なんでしょうか?それは、単純にCO2を削減したという価値ではないのかもしれません。エコな生活を実践したいという人々の「思い」なのかもしれません。ごみをなるべく出さないようにしよう、できるだけ省エネを心がけよう、そうした「心意気」に対して敬意を払うべき対価であって、「ほら、CO2削減する電気作ったから金くれよ」というドライなものではないのではないでしょうか。

同じことはRE100企業など使う側にも言えて、極端にいえば、省エネ意識など全くない企業が、不必要にエネルギーをCO2を多く使っても、CO2削減証書をたくさん買えば無駄遣いは帳消しにされて、エコ企業として賞賛されるっていうのは何かが違う気がするのです。

メルケルさんやオバマさんが提唱したグリーンエコノミーは、そしてその延長線上にあるRE100というイニシアチブは、専門用語で言えば、CO2の排出という「外部不経済」を内部化して取引するという画期的なものであるのだけれども、ムラ社会日本やアジアの多くの国々の思想信条とは少しずれている気がするのです。

でも、今までは、そんなことを言っても、「理屈ではそうかもしれないけれど、どうやって「人々の思い」を取引する仕組みを実装するのさ」と一笑に付されていたことでしょう。そこで、ブロックチェインが役に立つのです。ブロックチェインは、とても安価に、正確にデータを記録することができるのです。

まず、環境価値提供者は、思いを込めて創った環境価値の高い電気を、電気と「価値(with思い)」に切り分けます。電気は電力会社に売ります。「価値(with思い)」は別のプラットフォーム(例えば電シェ)に載っけます。ブロックチェーンは「価値(With思い)」を安価かつ正確に記録するのに最適なツールです。

例えば、ある大きなスポーツイベントをグリーンに行いたいという主催者がいるとします。そのイベントは大量の電気を消費するので、何十万人、何百万人の「価値(With思い)」が混じり合うことなく送り届けられます。そのプレミアムは、単なるメガソーラー事業者の環境価値とは異なります。思いが入っています。

例えば、そのイベント関連のWebサイトでは、ほぼリアルタイムで、今使われている電気がどのような人の太陽光発電で賄われているかをデジタルで表示することも可能になります。そのイベントが100%そういう思いのこもった電気で賄われたらいい、それが私たちの目指すSolar Blockchain Challengeの一つの目標です。使う人と作る人の絆が生まれます。

現在、住宅用太陽光発電で余剰電力を売っている人たちは、その電気や環境価値がどのように使われているかわからない仕組みです。でも、どのように自分が作った電気が使われたかきっと知りたいはずです。また、自分の努力をしっかり受け止めてくれる人に買ってもらいたいはずです。それは、単にお金の問題ではないのかもしれません。もちろん、プライバシーには十分配慮した上で、価値をやりとりする人が繋がり合う世界が来ればいいと思います。それがIoT時代のC2C取引であり、これは電気だけのことではなく、Society5.0実現のためのプラットフォームになるはずです。

株式会社電力シェアリング代表 酒井直樹

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