教育とテクノロジーの融合を推進し、新しい教育を構築するための新組織「超教育協会」に関し、デジタル教科書教材協議会(DiTT)の会合で政府代表を交えた意見交換が行われました。
超教育協会は経済団体やICT・コンテンツ系の業界団体が集結し、教育情報化後進国の日本を先進国に一足飛びにするための活動を行う方針で事前準備が進められており、DiTTとしても積極参加する方針です。
会合では、文科省・梅村情報教育課長、総務省・犬童情報流通振興課長、経産省・伊藤産業人材政策室参事官の3省代表が登壇されました。教育情報化に関し3省の責任者が揃うのはぼくは初めて拝見しました。司会は超教育協会の設立を主導する石戸奈々子さん。
超教育協会について、それぞれコメントがありました。
文科:技術活用に積極的に取り組む。色んな主体からインプットをいただきたい。
総務:税金に頼らない連携・継続を願う。教育のあり方が変わっていく。国全体として考えたい。
経産:教育の未来像を描くことが大事。「超教育」が流行語となるよう露出してほしい。
やりましょう。
3省の政策も披露されました。
文科省によれば、学校PCは5.9人に一台。これを2022年度には3クラスに1クラス分に整備したい。100Mbps以上のネット接続率48.3%を100%に。ICT支援員を4校に1人配置。そのため単年度1805億円の地方財政措置を講じる。
実は従来から文科省はこうした予算措置を講じているのですが、なかなか整備が進まない。それはこの予算がヒモ付きではなく自治体の裁量に委ねられているため、橋や道路などに流用されているから。学校のICT化が進むかどうかは首長の意識に左右される面が大きいのです。このため地域格差も広がっています。文科省は市町村別の進捗状況を公開するなど見える化を進め、意識向上を図っています。
総務省はIoT/AI時代のICT教育環境を整備し、意欲・関心を高める教育、未来の起業家の育成などに向かうそうです。地域でのIoTの学び推進事業として、企業や地域住民による学習機会の手法を確立するとのこと。
総務省犬童課長がフランス大使館で書記官を務めていた14年前、ぼくらが訪れてケータイ4コママンガワークショップを一緒に開いた思い出を語っていました。そうでしたね。
農業ではデジタル化が一気に進んでいるが、教育・医療は中途半端にシステムが入っていて大変、とのご意見。同意します。
経産省伊藤参事官。AIが人間の雇用を奪うというが、「AIvs人間」ではなく、AIを活用できる人材vsできない人材となる。第4次産業革命への対応に必要となるのはチャレンジ精神などのマインド、創造性・問題解決などの基幹能力、英語☓ITのリテラシー、その上での専門知識、という整理を提示されました。
(ぼくが設立を準備しているi大は、英語☓ITで創造性・問題解決を図り、全員起業などのチャレンジを行う学校です。AIを活用する人材を生もうと考えています。)
2点、質問してみました。
◯日本は教育情報化の先進国になれるか?
文科:デジタル教科書を正規化する学校教育法改正、超党派議連による教育情報化推進法案の2法によって推進力がつく。自治体の首長がポイント。自治体は対応せざるを得ない状況になるので、サポートしていく。
総務:制度が変われば人も変わる。電子政府が進んでいないので霞が関は偉そうなことが言えないが。
経産:正解がない分野だが、教育情報化の後進国だったことが幸いして、リープフロッグで強みになるかもしれない。未来を展望しよう。
◯民間への期待は?
文科:教材・サービスを自治体に働きかけ、学校と民間とが連携することを求む。
総務:データの活用などヨコ連携を。「みんなで」が大事。
経産:教育とビジネスは相反するのではなく、経済・ビジネスとして捉えることが重要。民間に「モメンタム」を作ってほしい。
3省から「学校」「総合」「経済」という各省らしいコメントがありました。それぞれ異なる役割を担いつつ、この分野の優先度を高めていただきたい。特にこのところ経産省が乗り出してきて、教育を産業として正面に位置づけることができるようになったのは好ましいことです。
デジタル教育の先に待つAI/IoT教育を日本がリードできるよう、官民連携を進めましょう。民間も汗をかきます。
なお、超教育協会の設立シンポが5月29日、慶應義塾大学にて開催されます。下記のかたがたが登壇予定です。
・野田聖子 総務大臣
・⼩宮⼭宏 東京大学第28代総長
・住田孝之 内閣府知的財産戦略推進事務局長
・八山幸司 内閣官房IT総合戦略室参事官
・柳沢幸雄 開成中・⾼校校⻑、元ハーバード⼤学教授
・石戸奈々子 CANVAS理事長、慶應義塾大学教授
https://www.facebook.com/events/1745677258831284/
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年5月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。