陸自が海上輸送力の整備検討、南西諸島で機動展開=関係者 https://t.co/hyJQMttdVJ pic.twitter.com/1oJDl3nGgS
— Reuters Jp World (@ReutersJpWorld) 2018年5月8日
5月8日、陸上自衛隊が、独自の海上輸送力の整備を検討していることが分かった。中国の海洋進出をにらんで発足した水陸機動団などを南西諸島で機動的に展開するため、離島の小さな港に接岸したり、海岸から人員や車両を揚陸できる輸送艇の取得を計画している。
複数の関係者によると、陸自は全長30メートル程度から100メートル程度まで、数種類の大きさの船を候補に調達の検討を進めている。南西諸島の離島間を行き来するには小さめの船が適する一方、日本本土から大量の物資や部隊を運ぶ場合は大きめの船が向いている。
陸自にはこれまで船を運用した経験がなく、ノウハウの取得には海自のほか、自前で船を持つ米国、英国の海兵隊から支援を受ける必要がある。「船の建造は3年程度でできるが、人員の養成には7、8年かかるだろう」と、関係者の1人は話す。
この話は実は商社筋から3年以上前から聞いておりました。
ですからL-CATにしろ、ケイマンにしろ陸自にも提案してきていました。
ぶっちゃけ、海自が当てにならないという話です。
自民党は空母保有と併せて提案している揚陸艇とはこれをさしているものと思われます。
これは原則揚陸艦に収納するのではなく、独航をするものと認識されております。
業界筋によれば調達は輸入ではなく、ライセンス国産も検討されており、その場合輸出もあり得るとのことです。
同じもの、あるいはその派生型が選ばれる可能性がありますが、おおすみ級のウェルデッキは注水できないので、現状2隻が搭載できず、1隻だが搭載できるようです。
そもそも論でいえば、海自は揚陸艇を軽視してきおり、ビーチングができるLSTなどの類いを殆どもっておらず、LCACに頼るといういびつな装備体系になっております。
LCACの問題はリーフで運用するとゴム製のスカートが破ける、後進ができない、旋回に大きなビーチが必要であり、南西諸島には向いておらず、しかも運用コストが馬鹿高い。であればL-CATのような高速な輸送艇を選択すべきでしょう。
これまたそもそも論ですが、陸自は水陸両用機動団の編成にあたって、事前にろくな研究をしておりません。英海兵隊ですら調査をしていない。陸自が調査をしたのは、ぼくが5年前に英海兵隊の取材をした翌年、つまり4年前です。その頃には既に水陸両用機動団の編成の骨子は決まっていました。
既に概要が決まってからでした。
事前に英海兵隊を調査していれば、AAV7を調達するなどという胡乱なことにはならなかったでしょう。
英海兵隊は既に揚陸の主力をヘリに移しています。このためAW101が多数導入されています。
また主力の装甲車は汎地形対応の2連結装甲車、バイキングです。これはヘリによる空輸も可能です。
AAV7はビーチでしか運用できず、リーフや護岸工事された南西諸島には適しておりません。
AAV7を使うのであれば、沖縄本島や宮古島あたりでしか使い道がありません。これらの人口が多い島々が占領されて、民間人を巻き込んだ強襲上陸作戦をやるとしかおもえず、それでは想定している島嶼作戦とは違う話です。
AAV7を導入するよりもビーチングができる揚陸艇とバイキングを組み合わせた方が余程宜しいとぼくはこれまでもなんども申し上げてきました。そのような揚陸艇が導入されるのであればAAV7の有用性は更に低下するでしょう。
英海兵隊は陸上戦闘でも多用されます。装備や訓練がよく、隊員の質も高いからです。ですから、アフガン派遣部隊の主力も海兵隊でした。水陸両用機動団も恐らくはPKOなどにも派遣されるでしょう。その場合AAV7は持って行くことはできないでしょう。持っていっても図体がでかいばかりで役に立たないでしょう。
つまり、島嶼から揚陸艇の採用を前提であれば水陸両用機動団の編成は大きく変わっていたでしょう。
陸幕の当事者意識と能力が極めて低いと言わざるを得ません。
部隊を編成すれば莫大なカネが必要となります。そうであれば、事前の調査は十全に行うべきです。ところが実態は米海兵隊を横目でみて、ろくな調査もせずに、妄想だけで水陸両用部隊の編制を決めてしまったわけです。
一両惜しみの百両損というやつです。
水陸両用機動団は本年度から実際に活動するわけですが、今後いろいろな不備が浮上するでしょう。
メディアはこれを擁護するのではなく、どんどん指摘していくべきです。
■本日の市ヶ谷の噂■
陸幕は派遣後に自殺者多数が出たイラク派遣隊員の当時のカルテを、個人情報保護を名目に証拠隠滅のために廃棄したとの噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年5月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。