先日、自民党の衆議院議員が「子どもは3人以上を」等の発言をして様々な方面から非難を浴びたが、この発言から見えてくるのは少子化の歯止めを政治家が「政策」で行うつもりがあるかどうかの「本気度」だ。
上述の議員はその発言後記者団に対して「少子化は一番大事な問題だ。お願いするのはいいのではないか」とも述べたらしい。「お願い」で出生率が上がると本気で思っているのならば、発言の要旨よりその考え方こそが問題だ。
少子化克服国といわれるフランスは1930年代から少子化対策に「お願い」ではなく「政策」で取り組んできたのである。
確かに日本もこれまで少子化対策に取り組んできた。1989年の合計特殊出生率が1.57を記録した所謂「1.57ショック」を受け、1995年から始められたエンゼルプランや、2000年からの新エンゼルプラン、そしてその後も様々な施策が策定・実行されたが、2016年時点の合計特殊出生率は1.57どころか「1.44」にとどまったままだ。(※厚生労働省 H29.12.22「2017年 人口動態統計の年間推計」参照)
国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の人口置換水準(人口が長期的に増えも減りもせずに一定となる出生の水準)は概ね「2.07」だとしている。これまで20年以上に渡り少子化対策の施策が取られてきたにも関わらず合計特殊出生率が「1.44」にとどまっている現状を見れば、この「2.07」という数字がいかに困難なものであるかが分かる。
また、同研究所HPでは日本の人口減少のメカニズムを人口モメンタム(人口が持つ増加・減少方向への惰性の強さ)という言葉を使って説明しているのだが、これを見れば仮に「過度」と揶揄されるほどであっても緊急的で矢継ぎ早な少子化対策の必要性を感じずにはいられない。以下はそこからの一部抜粋である。
”長期にわたって低出生率が続いた結果、若い世代ほど人口規模が縮小しており、一人ひとりの出生数が回復しても、全体としての出生数が増えない状態にあることを示している。~中略~ こうした減少モメンタムを持つ人口は、たとえ出生率が置換水準まで回復したとしても、その規模は最終的に縮小することが運命付けられている。”
(出所 国立社会保障・人口問題研究所「人口減少のメカニズム」)
つまり、今すぐ合計特殊出生率が「2.07」となっても、日本で起きている人口減少はすぐには止まらないというのだ。
今日も、「財務省で破棄したはずの文書が存在した」とか「愛媛県で新たなメモ文書が見つかった」など、野党とマスメディアは「モリカケ問題」の追及に余念がない。確かに「モリカケ問題」を追及するのも政治と報道の責任なのだろう。
しかし、そろそろ危機的状況に置かれている少子高齢化・人口減少をもっと論じて欲しいという声にも耳を傾けていただけないだろうか。
もう一度言うが、「今すぐ」出生率が上がっても人口減少は止まらない。ましてやその対策が遅れれば少子高齢化・人口減少がさらに加速するのは火を見るより明らかだ。
「お願い」で少子化は克服できない。唯一少子化を克服できる可能性があるのは「政策」だけなのだ。