北方領土問題と日ロ関係

鈴木 馨祐

国交省サイトより:編集部

北方領土返還の行事に出席のため、北海道根室市の納沙布岬を訪れました。

日本は地政学的に、北朝鮮、中国、ロシアという軍事大国に囲まれています。

その中で現在、クリミアの併合について武力による現状変更を行ったとして日本や欧米からの制裁の対象となっているロシアですが、最近もイギリスにおける元スパイ毒殺未遂事件で更なる制裁を課されている状況です。実は、そのロシアが現在も不法占拠を続けている北方領土こそが、第二次世界大戦後、当時のソ連によって世界で最初に武力による現状変更が行われた場所です。

不法な武力行使による現状変更が容認されるようなことがあれば、国際社会は不信と混乱の連鎖に陥り、相互不信は不要な軍拡競争を招き誰の得にもなりません。だからこそ国際社会はそのような行為を断固排除してきたわけです。まさにこのような法の支配への努力を完全に無視した行為の象徴として、日本は旧ソ連とそれに続くロシアの北方領土における不法な侵略行為と占拠の事実を国際社会に対して更に発信していく必要があります。

国際法的には、第二次大戦後においても、北方領土だけではなく、武力などによらない歴史的経緯から日本に帰属していた占守島までの千島列島も、日本に帰属すべき領土でありました。その後1951年になって日本がサンフランシスコ平和条約によって千島列島(と南樺太)にかかる権限を放棄したために、現在では歴史上一度も他国に所属したことが無い北方領土のみが日本の一部であるというのが正しい解釈です。

そもそも、日露戦争の結果として日本に帰属することとなった南樺太とは全く異なり、江戸時代から樺太千島交換条約に至るロシア帝国との各種条約の中で、武力に全く関係なく国際法的にも何ら問題なく日本の一部であったのが千島列島です。だからこそ、ポツダム宣言を受諾した日本が降伏し、第二次世界大戦が戦闘行為としては正式に終わった時点で、北方領土に加えて千島列島も日本の一部であったことが歴史の事実です。

加えて、正確に理解が必要なのは、ソ連軍が降伏した無抵抗の日本に侵攻し千島列島と北方領土を不法占拠したのは第二次世界大戦が終わった後であったということです。つまり第二次世界大戦とも関係がない不法な武力侵攻の結果としての占拠であることは極めて重大な事実です。

そして、日本は、千島列島こそサンフランシスコ平和条約において放棄していますが、北方領土の四島は、第二次大戦後のソ連の不法侵攻によるものを除き、歴史上他国が支配したことが一度もない固有の領土でありそもそも論争にもなりえないものだということも重要な事実です。

まず、これらの認識を国内においても国際的にも改めて共有しておく必要があります。

戦争における占領地ですらなく、戦争後の不法侵攻による不法占拠を既成事実化する試みについては、第二次世界大戦以降、国際社会が糾弾し続けている行為であり、そのようなロシア・ソ連の本質は最近のクリミア侵攻においても世界に広く知られるようになったところです。我が国としてもこと北方領土に関しては、ロシアへの協力をすすめることでロシアに配慮してもらうということではなく、筋は筋として、ロシアの歴史的な不法行為を世界に対して正確に伝え、国際世論の中で共通の理解を得られるように努めるべきなのではないでしょうか。

この問題に関して、ある時点まで、中国共産党は北方領土が日本のものであるとの見解を明らかにしていたようです。このように中ロ関係は戦略的ファクターで動いてきたという現実を考えれば、日本がロシアに対して北方領土問題があるがゆえに国際的な潮流に反して接近しすぎることは、むしろ日本の長期的な国益の観点からも望ましくないのではないかと思われます。


編集部より:この記事は、自由民主党青年局長、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区)のブログ2018年5月24日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家  鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。