あなたの緊張を調整する6つの法則!これで不安にサヨナラ

尾藤 克之

画像は書籍書影(筆者撮影)

「試験や受験で緊張して、実力を十分発揮できない」「スポーツの試合で緊張して、実力を十分発揮できない」「人前で話すと緊張する」。そんな、緊張しやすい人、緊張が苦手な人はいないだろうか?緊張は「敵」だと思っている人が多いが、それは「脳科学的」に考えると完全に間違っているようである。

今回は、『いい緊張は能力を2倍にする』(文響社)を紹介したい。著者は、樺沢紫苑医師。雑誌、新聞などの取材やメディア出演も多い。緊張をコントロールし、パフォーマンスをあげる方法を聞いた。

15秒の「間」が心の余裕を作る

樺沢医師は、心の余裕をつくるために「間」を効果的に入れることを推奨している。話と話の節目に、「15秒」の問を入れるというものである。

「短いスピーチで15秒の問は長すぎますが、長い講演の場合は、話題転換のタイミングで15秒ほどの『間』を入れるといいでしょう。参加者も話を理解したり、整理する時間になるので理解度、満足度も高まります。『15秒』の間は、長く感じるかもしれませんが、参加者の側からすると、『ほんの一呼吸』程度にしか感じないものです。」(樺沢医師)

「緊張している話者が『15秒』の問をとったつもりでも、実際は『10秒』程度になってしまうので、そのくらいがちょうどいい『間』になっているのです。」(同)

また、「ゆっくり話す」ことは、「怒り」のコントロールにも非常に有効と言われている。「ゆっくり話す」だけで「怒り」はコントロールできる。

「『ゆっくり話す』ことは、『怒り』のコントロールにも有効です。クレーム対応のとき、ものすごい剣幕で、早口でまくしたててくる、という場面があります。『怒り』とは、『緊張』よりも激しい神経の興奮状態ですから、『早口』になるのです。」(樺沢医師)

「相手の『早口』につられて、こちらも『早口』になると、相手の『怒り』に巻き込まれて、怒りがこみ上げてキレやすくなります。ここでクレーム対応の側かキレてしまうと、先方は怒り心頭の状態となり、クレームがこじれて大変なことになります。」(同)

このような場合には、「ゆっくり話す」ことを意識しなければいけない。相手の「怒り」にのみ込まれなければ、平常心で対応することができる。

「渡部陽一さんのように、ゆっくりと噛みくだくように話すと、不思議なことに相手の話す速度が徐々にダウンしてきて、怒りも収まってくるのです。心理学では、これを『感情伝染』といいます。相手の『怒り』がコチラに伝染して怒ってしまうのではなく、『冷静』なコチラの感情を相手に伝染させて、相手の感情をクールダウンさせる。」(樺沢医師)

「物腰を柔らかく、ゆっくりとしたスピードで丁寧に話すようにする。5分もすれば落ち着いた状態になるのです。話すスピードを変えるだけで、副交感神経と交感神経、緊張や怒りなどを自由にコントロールできます。ものすごく便利な心理テクニックです。」(同)

感情をコントロールする意味

EQ(Emotional Intelligence Quotient)という理論がある。私たちが望ましい社会生活をおくるには、IQ(頭のよさ)ではなく、EQ(心の知能指数)が重要であることや、成果に影響を及ぼしていることを理論化したものになる。日本では、EQJAPANが確立し、EQ理論提唱者のイェール大学のピーター・サロベイ博士(現イェール大学学長)、ニューハンプシャー大学教授のジョン・メイヤー博士との共同研究をおこなっていた。

当時、私は同組織にて、ソリューション、戦略・研究開発などを統括する責任者の職位にあった。EQ理論のひとつに「6セカンズ」がある。カッとすると、感情(情動)がハイジャックされて、暴言や暴力につながったり、余計な一言を言ってしまうことがある。そのため、カッとなったら6秒間沈黙して、感情を上手くコントロールするというものだ。

樺沢医師の「脳科学理論」は、EQ理論の「6セカンズ」に通じる要素があると考えられる。EQは心理学に分類されるが、脳科学理論との親和性は高そうである。私たちが望ましい社会生活をおくるには、感情を調整する包括的なコミュニケーション力が必要とされる。

最近、感情のコントロールを苦手とする人が増えている。とくに、公的な場で感情をあらわにすることは品位にかかわるので避けなければいけない。この機会に感情をコントロールする意味について考えてみてはいかがだろうか。

尾藤克之
コラムニスト