法案成立で2022年から「18歳成人」は何を変えるか

高橋 亮平

18歳成人法案成立。140年ぶりの成人年齢引き下げ

成人年齢を18歳に引き下げる民法改正案が13日の参議院本会議で可決された。
これにより2022年4月1日に施行され、成人年齢は18歳となる。
成人年齢は1876年(明治9年)に発布された政官布告で20歳と定められてから実に140年ぶりの変更となるという。

「18歳選挙権」の実現による選挙権年齢引き下げが70年ぶりであった事と比較しても2倍である。
成人年齢引き下げについては、これまでも2017年8月に『【自民党が進める若者参画】秋には「18歳成人」、2019年までに被選挙権年齢も引き下げ』、2016年8月に『どこよりも詳しい「18歳成人」解説。被選挙権年齢引き下げにつなげ!』などと事あるごとに触れてきたが、民法の成人年齢引き下げは、社会的にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

「18歳成人」で何が変わるのか

図表: 成人年齢引き下げによる関連法の改正等

今回の法改正で、18・19歳でも親の同意なしでクレジットカードやローンの契約などが可能となる。
こうした事により若者の消費者トラブルの増加も懸念されるため、不当契約については成人でも取り消せる規定の追加など消費者契約法も改正される。

一方で、女性の婚姻可能年齢は現在の16歳から18歳に引き上げられ、男女ともに18歳となった。
関心も高い飲酒や喫煙、公営ギャンブルの解禁年齢については現行の20歳を維持することとされた。

なぜ「18歳成人」になったのか

図表: 成人・選挙権・被選挙権等年齢の推移と関係法令との関係

そもそもなぜ成人年齢が引き下げられる事になったのだろうか。
成人年齢引き下げのキッカケは、『どこよりも詳しい「18歳成人」解説。被選挙権年齢引き下げにつなげ!』にも書いたように、第1次安倍政権であった2007年5月に成立した日本国憲法の改正手続に関する法律(以下、国民投票法)であり、その附則第3条第1項の「満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする。」と明記されたことだった。

詳しくは、著書『子ども白書2016 18歳「成人」社会~「成人」とは何か~』(本の泉社 )なども読んでもらえればと思うが、この国民投票法の仕掛によって2015年5月に「18歳選挙権」が実現、今回の「18歳成人」へと繋がった。

政策形成過程には若者も参画。今後はさらに被選挙権年齢引き下げへ

2015年9月に『18歳成人、酒・タバコも解禁へ、自民、政策形成過程では若者30人を招く新たな若者参画の試みも』と書いたが、今回の「18歳成人」実現のプロセスでは、同年8月に行われた自民党の成年年齢に関する特命委員会に20歳以下の若者30人が招かれ、自民党による公式にヒアリングが行われた。

「18歳選挙権」の際も政策形成過程のプロセスも知らずに「当事者の不在」を指摘する人たちがいたが、今回の成人年齢引き下げの問題は、より多くの人たちの生活に直結する影響があるとも言える。

その意味では、法改正のプロセスにおいても勿論、今後のさらなる周辺の法整備や環境整備においても当事者である若者の声を聞き入れる仕組みも整備してもらいたいものだと思う。

今回の法改正では、少年法改正は見送られた。
もう一つの宿題となったのが、「18歳選挙権」実現の際から片手落ちだと指摘してきた「被選挙権年齢引き下げ」だろう。

被選挙権年齢引き下げについては、今年2月にも『自民党が2019年までに被選挙権年齢も20歳に引き下げる!』を書いたが、自民党内でも様々な部署での検討が進んでいる。

日本の成長戦略や未来のためにも、若い人材が活躍できる環境整備を

一方で、今月、政府は成長戦略の一つとして、「未来投資戦略2018」を発表した。
高度成長期を終えたとされる日本においては、今後どう成長していけるかは大きな課題と言える。
この戦略の中でも先進国の共通課題として人口減少、少子高齢化を上げる一方、人材は日本にとっての豊富な「資源」の一つとして強みに位置づけている。

次世代モビリティ、次世代ヘルスケア、デジタルガバメント、次世代インフラ、PPP/PFI手法、AI・ロボットによるスマート化などを重点分野として、データ駆動型社会の共通インフラ整備や、大胆な規制・制度改革を実施して行くという。

強みとなる人材をさらに長いスパンで養成して行くためにも、どう若者たちが活躍できる社会にしていくかは、非常に重要な要素と言える。

政界、経済界は勿論、あらゆる分野で若者たちが更に活躍できる社会を実現していくためにも、今回の民法改正を単に成人年齢を引き下げただけにする事や、社会における責任だけを重くする事にならないよう、若年成人対策をはじめ、更に若い人材が育ち、活躍できる環境整備を徹底していく必要を強く感じる。