こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
「もうおねがいゆるして」防げなかった虐待死…東京都と児童相談所は何を変えるべきか
東京都・目黒区で起きた虐待死事件が大きな注目を浴びてから約2週間が経ちました。
この間、埼玉県や岐阜県知事が次々と虐待情報を捜査機関(警察)と「全件共有」する方針を発表しています。
【埼玉】児童相談所と県警 虐待情報「全件共有」へ(東京新聞)
社会起業家の駒崎弘樹さんも詳述しているように、現在、東京都の児童相談所が警視庁と情報共有している件数はごくごく僅かに留まります。
なぜ児童虐待の約6%しか警察に知らされていないのか?(駒崎弘樹Blog)
虐待情報が適切に警察に共有されていれば、騒音や子どもの叫び声などで近所から通報があったとき、警察が仲介するなどして児童相談所が児童を保護できたと思われるケースも過去に実際に発生しています。
こうした不作為により、「救えたはずの命」が失われてきたことは誠に遺憾であり、政治・行政の不作為という誹りを逃れることはできません。
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確かに警察との全件共有は「魔法の杖」ではありません。これだけで、すべての虐待事案を防げるような特効薬にはならないでしょう。
しかし、子どもたちを救う「網(セーフティネット)」が大きく広がることは確実です。
この「網」をどうきめ細かく運用していくか、そこが問われるステージに入っているのであって、もはや網を広げることが是か非かを論じている段階ではないと強く思います。
「警察が介入することで保護者の態度が硬化し、支援が途切れてしまうかもしれない」
という、一部専門家が示している懸念についても同様です。
そもそも警察が介入したことで児童相談所の支援に支障をきたした・保護者の態度が硬化したケースがどれだけあったのか、定量的なデータがないので評価することが難しいのですが、警察との連携を前提とした上で支援体制を構築する方法を考えるべきではないでしょうか。
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全件共有への懸念やできない理由を考えていけば、いくらでもあげることができるでしょう。
例えば警察との情報全件共有のメリットとして、
「騒音などで通報があったときに、虐待案件だと警察が知っていれば、虐待を見過ごさずに適切に対応できる」
というものがありますが、この点について先般福祉保健局の職員と意見交換した際、
「全件情報をすると、『この家庭は虐待情報がないからその点は大丈夫』と警察に予断を与えてしまい、逆に虐待を見逃す可能性が増える」
というような懸念を話され、思わず呆然としてしまいました…。
こうした見方をしていれば、すべてのメリットをデメリットとして捉え、実施をいつまでも先延ばしにすることができてしまいます。
繰り返しになりますが、全件共有は万能薬ではありませんし、実施にあたってマンパワーの不足などの深刻な課題もあります。
だからこそトップが情報全件共有の方向性へと踏み出せば、それを円滑に行うために予算・人員を増やすことになる等、そこを起点として児童相談所の体制強化が進むはずです。
他自治体との情報共有制度の改善を国に要望することも重要ですが、足元の東京都政で、小池知事の政治決断によってできることがあります。
情報全件共有は大阪府・神奈川県・千葉県などでも検討が進んでいると言われており、大都市で東京都だけが取り残される状況にもなりかねません。
「情報共有範囲の拡大」を時間をかけて検証しているうちに、万が一にでもまた深刻な虐待案件が発生してしまったら、やるべきことを怠った政治に対する不信は頂点に達してしまいます。
警察との虐待情報全件共有は「やるか、やらないか」ではなく「どうやるか」のステージに入っている。
このことを何度でも強調し、また本議会でも一般質問を通じて小池知事に提言していく所存です。
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なお本件に関連しましては、先述の社会起業家・駒崎弘樹さんが発起人の一人となり、「総力をあげた児童虐待対策」を求める署名が始まっています。
(真鍋さん…!)
ぜひこちらにもご協力いただき、皆様の声を政治に届けていただければ幸いです。
また、小池知事のみならず都議会からも国に対して「意見書」という形で提言をすべく、当会派「かがやけTokyo」は都議会各会派に児童虐待防止対策の拡充を求める意見書提出を呼びかけているところです。
案文は上田都議Blogに全文の記載がありますので、よろしければこちらもご一読・ご支援くださいませ。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年6月14日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。