6月13日の日本の債券市場では、国債のベンチマークとも言える10年国債の直近に発行された銘柄(市場ではカレント物と呼称している)が、日本相互証券(BB)で取引が成立しなかった。
日本の国債を中心とする債券の売買は、主に相対取引で行われている。その多くは業者と呼ばれる証券会社などと投資家が直接相対で取引する。これについては外部から、つまり当事者以外には見えない。売買高などは証券業協会などに報告されることで、月次での売買高はのちほどわかっても、リアルタイムではわからない。
ただし、証券会社などの業者は自らのポジション調整等のために日本相互証券などを通じて業者間で売買を行っている。それは日本相互証券の端末を持つ業者ならばリアルタイムで把握できる。13日の10年国債カレントの出合いがなかったというのは、日本相互証券での取引のことである。
このため実際には業者と投資家の間で取引があった可能性はある。しかし、業者のポジション調整の場として、もしくは思惑的な理由からポジションを保有する目的でも使われる日本相互証券で、現物債のベンチマークといえる10年債カレントが出合わないというのは、それだけ流動性が枯渇していると見ざるを得ない。
もちろん6月13日に初めて10年債カレントが日本相互証券で出合わなかったわけではない。6月11日には10年債だけでなく、2年債と5年債のカレントまでもが出合いがなかった。こちらは極めて異例と言える。
日銀は6月14日に3年超5年以下の国債買入を前回6日の3300億円から3000億円に減額した。1月31日に日銀は3年超5年以下を3000億円から3300億円に300億円増額していた。これは欧米の長期金利上昇を背景に日本の10年債利回りが0.1%に接近したことに加え、1月9日に超長期ゾーンを減額した際の影響を打ち消す意味もあった可能性もあり、シグナル効果を意図したようなオペレーションとなった。
今回はこのタイミングで再び3000億円に戻した。国債の利回りがここにきて特に低下していたわけではない。13日にFRBは利上げを決定し、米長期金利に上昇圧力が掛かりやすいタイミングでもあった、もちろん米長期金利が上昇すればドル円も上昇する可能性があり、円安圧力が強まることも予想され、外為市場への影響を軽減できるというタイミングも意識されたのかもしれない。
しかし、それ以上に国債の流動性も意識された可能性がある。現物債市場は、ほぼ日銀により独占されてしまっているような状況にあり、それが国債の流動性を枯渇させている。それを多少なり緩和させるための減額とも言えなくもない。ただし、300億円減額したからといって今の状況が大きく変わるわけでもない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年6月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。