元自衛官に学べ!会社や上司の理不尽に負けない方法がある

写真は自衛官時代の生方さん

「給料が厳しい」「子供の塾代が足りない」「家族旅行に行きたい」と、副業を考えている人が最近増加傾向にある。エン・ジャパンが公表した「ダブルワーク意識調査」(2017年2月)によれば、経験者は59%で過去最高を記録している。現業に支障がなく、体調を考慮して、無理のない範囲で行うことが大切である。

今回は、『高卒自衛官が実現した40代で資産2億円をつくる方法』(あさ出版)を紹介したい。著者は生方正(うぶかた・ただし)さん。高校卒業後、海上自衛隊入隊。写真員となる。撮影した数々の写真は、部内は元より、国内外の新聞、雑誌、TVに採用され、その功績により7度の表彰を受けている。

40代の挫折を救ってくれた「出船の精神」

旧海軍の躾の中に「出船の精神」という言葉がある。艦船が港に入港した際、船首を港口に向けて停泊させることで、緊急事態に備えてすぐに出航できるようにしていたことから「常に迅速に行動できるよう、いかなるときも準備を怠らない心構え」をあらわす。

「この『出船の精神』が役立ったのが、奇しくも自衛隊を退職する決意のきっかけとなったある出来事でした。高卒で入隊した私も勤務26年目を迎え、ついに43歳で3等海尉に昇任しました。一般的に幹部ともなれば、『多くの部下がいて仕事が楽になる』と考えるかもしれませんが、私にとっては悪夢の始まりでした。」(生方さん)

「ことの発端は、幹部となり初めて着任した部隊で起きました。着任早々、国の予算が適正な会計経理が行われているかを監督する会計実地検査が行われました。数万円のものですら厳しく審査される会計実地検査において指摘されたのは、私の部署に納品されたばかりの、1000万円を超える特殊な装置についてだったのです。」(同)

その装置は、前任者からの引き継ぎでいわくつきのものだった。部隊の運営上必要な機材で、老朽化のため新しく購入しなければいけない。しかし、特殊な装置がゆえに業者の納期が間に合わないかもしれないというものだった。検査が行われる1ヵ月前から、生方さんは他の配置に派出を命じられていたそうだ。

「その後、会計実地検査により、完成品でないものを受領したことが問題となり、私を含む関係者5人が後日、懲戒処分を受けることになりました。事実関係を明らかにするため資料作成に追われて仕事の量は増えるばかり。上司の理不尽な要求にふりまわされたうえ、ボーナスは減額、勤務評価も下げられる始末でした。」(生方さん)

「いったいこの先、何度このようなことが繰り返されるのだろうかと思うと、夜は寝つけず朝も起きられないことが続き、ついに医者からはうつ病の診断が下されました。このとき、はっきりと退職することを意識しました。」(同)

生方さんも、20代、30代の若い頃に、何度か退職を考えたことはあった。しかし、辞めると同僚に負担がかかる、長年の夢である南極行動への参加の夢がついえる。自衛隊を辞めて生活できるだけの資産がないなどの理由から、辞めることを決断できなかった。

「定年まで自分を押し殺して勤務しても艦長になれるわけでもなく、よくて科長止まり。先が見えているのに次から次にくる無理な要求に応え続ける意味があるのか。54歳で定年退職した後、仕事を見つけても収入は大幅に減り、仕事にやりがいを感じられるとは思えない。そう考えたときに、今が辞めどきだと思いました。」(生方さん)

退職を後押ししてくれた資産と節約術

退職を後押しした理由はほかにもあった。30代から始めた投資により、このとき、資産は億を超えていた。給与収入がなくなっても不動産による家賃収入で、生活するのには困らないだけの所得も確保できていたのである。

「万が一、収入が途絶えたとしても、長年続けてきた倹約生活により月12万円あれば生活できる自信もありました。そこまで考えたとき『仕事を辞めて、これからは自分の好きなことをして生きていく』と決断することができました。」(生方さん)

「『出船の精神』を意識して『倹約· 投資』の準備を長年続けてきたからこそ、退職を決意することができたのです。一時はうつ病になるほど追いつめられた40代の挫折が、人生のよい転揆期となり自由な時間を自分にもたらしてくれたのです。」(同)

生方さんは、早い段階から資産形成をおこなっていた。結果的にはそれが功を奏することとなる。多くの企業で「副業解禁」の動きが見られるが、生方さんは、勤務中以外のプライベートな時間を効率的につかい資産を形成している。

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尾藤克之
コラムニスト