昨日(21日)、『なくそう!子どもの虐待プロジェクト2018』の記者会見をしました。
多くのメディアの方々にお越し頂き、本当に感謝です。
さて、10万近くの署名が集まり、大きな世論が可視化されてきたこともあり、これまで放置だった児童虐待防止施策について、次々に大きな変化が生み出されています。
ハイリスク全件共有
まず、都議会においては音喜多駿都議の質問に対し、
「児相に相談があったケースで親が子の確認を拒否したり措置継続中などハイリスクケースは全て共有」と小池知事が答弁しました。
これまでは、児相から警視庁に情報共有している件数は、全体の約6.2%に過ぎませんでした。
かなり限定的にしか情報を共有しておらず、それが虐待の見逃しや、面会拒否の際に踏み込めない要因にもなっていました。
今回は、そこから一歩進み、リスクの高いケースを警察と共有していく方向性が打ち出されたのは画期的だと思います。
一方で「リスクが高いかどうか」ということを、正しくアセスメントすることは、かなり難しいことです。
先日も、テレビ台の下に閉じ込められて4歳の子が亡くなっていますが、児相職員は複数回に渡って家庭訪問しているに関わらず「説明に矛盾は確認できなかった」と言っています。
小倉4歳児死亡:児相が父母面会「説明矛盾確認できず」(毎日新聞)
この辺りの「どこに線を引いていくのか」ということは、今後しっかりと議論しなくてはいけないことかと思います。
脱FAX
また、我々が訴えてきた、「FAXでの情報共有はもうやめてくれ」という件。
これについては、厚生労働省内部の方が動いてくださり、脱FAXに進むことになりました。
児相間の情報伝達確実に=ファクスからメールへ―厚労省(時事通信)
厚生労働省は、児童虐待防止対策を強化するため、支援が必要な家庭の転居先が不明になった場合、児童相談所(児相)間の情報共有の方法を見直す。
所在確認のため、これまでファクスで送っていた子どもや親の情報について、児相のメーリングリストを活用したメール送信に改める方向で全国児童相談所長会と調整。迅速で確実な情報共有につなげる。
東京都目黒区で5歳の女児が死亡した児童虐待事件では、転居前に住んでいた地域の児相と転居地の児相の間で、情報共有が十分でなかった可能性が指摘されている。虐待をした親が児相から逃れるために転居することは珍しくなく、児相間の迅速な情報共有が必要になる。
現在、引っ越しなどで居住地が不明となった、支援が必要な家庭については、子どもや親の情報などを記載した書類を児相間でファクス送付し、所在を確認している。危険性や緊急性が高いケースでも時間を要しているのが実情だ。
このため見直し後は、全ての児相を登録したメーリングリストを作り、活用する方針。転居前に担当していた児相が、要支援家庭について各児相にメールで情報を伝える仕組みだ。記録が残るため、情報を見落とす可能性も少なくなり、情報伝達の確実性が高まる。
いやー、良かった!と思いつつ、「メーリングリスト⁉︎」と二度見してしまいました。
メールだと見落としもあるし、検索性が低かったり、アラートを出したり、ということもできないわけで、普通にデータベースにして頂きたいところ。
しかし、とりあえずはメーリングリストの方がだいぶマシなので、これでPCが苦手な職員の方々に慣れてもらって、その間にデータベースの設計についての話し合いと調整を進めてもらって、3年後にはデータベースに移管してもらえれば良いか、とも思います。
最後に
このように、世論が高めれば、政治は動かざるを得なくなります。声をあげて、少しでも前に進めていけたら、と思います。
今後、厚生労働大臣、小池都知事にと、署名を渡しにいけることになりました。彼らの背中を少しでも押せるよう、引き続き頑張って参りたいと思います。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年6月21日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。