W杯ロシア大会、米国での真の敗者は…

NYに住んでいた当時、プエルトリコ人からこんな話を聞きました——「米国はヒスパニック系に国に変貌しつつある。東はプエルトリコ系、南はキューバ系、西はメキシコ系が大挙して移住しているからね」。

2018年のW杯でも、ヒスパニック系がその存在感を遺憾なく発揮しています。

米国ではFOX系列のTV局が英語圏の放映権を獲得し、スペイン語では米国内のスペイン語TV局でNBC傘下にあるテレムンドが権利を得ました。視聴者数では、FOX系列がテレムンドを2倍近く上回り圧倒的な優位を築いているんですね、しかし、W杯視聴者数では、サッカー人気の差が明暗を分けました。これまでの1試合当たりの視聴者数の最高は、FOX系列がデジタル部門と合わせブラジルVSスイスの平均430万人と、今年のスタンレー・カップ、即ちプロホッケー頂上戦の平均479万人にも及びません。

テレムンドはというと……サッカーに傾ける情熱の違いを如実に表しています。メキシコVSドイツの大番狂わせがこれまでの最高で、何と平均712万人に達したというではありませんか。ちなみに、FOX系列での視聴者数は同試合で平均425万人と、今大会2番目にとどまります。

14試合が行われた時点での視聴者数平均をみると、FOX系列の視聴者数平均は前回2014年大会比で49%減の208万人でした。ただ、テレムンドも前回放映権を有していたウニビジョンと比較し45%減の210万人と落ち込んでいます。広告主であるVW、ベライゾン、フォード、アディダス、トヨタなどは当てが外れてしまいました。ロシア大会の敗者に、36年ぶりの予選敗北でスタートを切ったドイツ(名誉挽回の余地はあるものの)、FOX系列のTV局以外に、米国での広告主が含まれることは間違いありません。

敗因は、米国代表チームの地区予選敗退でしょう。米国は1990年以来、94年の米国大会を含め7回連続で出場し、日韓共催の2002年大会ではベスト8を勝ち取ったものの、今年は無念な結果に終わりました。

ロシア大会の公式ソング、”Live It Up”ではアメリカ人ラッパー兼アカデミー賞ノミネートのウィル・スミスが参加。
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(出所:youtube

ロシアゲートに揺れるなかで、サッカーの米国代表はW杯ロシア大会進出を逃したものの、幸い2026年はNAFTA大会もといカナダ、メキシコとの3カ国共催とあって、開催国枠での出場が決定しています。従って今回の地区予選敗退は、1954〜86年まで続いた暗黒時代の幕開けを意味しません。米国が雪辱を果たし活躍するのを、TV局だけでなく広告主も大いに期待していることでしょう。

(カバー写真:Marco Verch/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年6月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。