日本の競争力強化に必要なサンドボックス制度 --- 星野 剛士

寄稿

私がこの数年持つ問題意識は、アマゾンをはじめとするITサービスやシェアエコノミーなどで海外から新たなサービスが日本にすごい勢いで入ってきており、日本のサービスを圧倒していることです。結果として国内の消費者データを海外に吸い上げられています。

日本で芽が出ようとするサービスの多くが規制に阻まれる一方、瞬く間に市場を席巻する海外のサービスに日本の国内マーケットは抑えられ、海外サービスから消費者を守る規制を作るという状況があります。そうした問題を解決すべく国家戦略特区などの制度を使い、競争力のあるサービスの開発にこれまでも取り組んできましたが、まだ十分な環境を整え切れていないのが現状です。

現状の問題認識を踏まえ「サンドボックス」制度を国会質問で繰り返し政府に提案してきました。この制度は通常規制では禁じられる新技術やアイディアのサービスを新規事業として解禁するものであります。サンドボックス=砂場(英語)のように、アイディアを試行錯誤してクリエイティブ溢れるサービスを作っていくことから英国で名付けられました。

日本におけるサンドボックス制度は地域限定型とプロジェクト型の二種類があります。まず、地域限定型の対象は自動運転技術やドローンで、地域限定型にするものは国家戦略特区の改正によって、また、プロジェクト型の対象はフィンテックや人工知能(AI)で、地域を問わない生産性向上特別措置法(生産性革命法)新設で実施されます。

今回は地域限定型サンドボックスについて神奈川県を事例にお話しし、プロジェクト型サンドボックスは別の機会に書きます。

神奈川県は規制改革の先頭を走る地域であり、全域が国家戦略特区に指定されている唯一の広域自治体です。先進的取り組みはこれまでも行われてきており、私の地元でもある藤沢のまちで全国初デビューしたロボネコヤマトの実証実験が1年間行われました。すでに藤沢市内の一部地域では無人運転を想定した配送車が走り回り、10分刻みのお届けによる不在宅の減少や、買い物難民へ市内商店からの配達が活発に行われました。

また先日の6月25日には湘南海岸公園で湘南UAVデモンストレーションが行われました。日本初公開となる海外の無人航空機も含め、実際にドローンを飛ばし機能をみせるというイベントでした。

湘南で飛行したドローン(Drone Future Aviationプレスリリースより:編集部)

湘南UAVデモンストレーション実行委員会を取り仕切っていた慶應義塾大学の南政樹准教授にお話を聞いたところ、神奈川県における無人航空機の大規模なイベントは前例がなかったため手続き等を進める中で非常に骨を折られたとのことでした。神奈川県が国家戦略特区として相模ロボット特区を指定していなければ行うことが難しかったともおっしゃっておりましたが、現在の特区では不十分であるとも改めて認識をしました。

サンドボックスはこれまでの特区とは違い、まずサービスありきで物事を考えます。一つのサービスを規制フリーの中で実験していくなかで、最低限必要な規制は何かを考えていくというこれまでとは全く違うアプローチを行います。

神奈川県の海や山でドローンを自由に飛ばし撮影ができるフィールドを作るのも面白いかもしれません。そうすれば、ほかの都市にはない新たなフィルムコミッションの実証ができます。環境を作ることで最適化されたドローンの開発も進むかもしれません。砂場(サンドボックス)で子供たちが活き活きしているのは、自由に好きなものを作れることに加え、新しいアイディアを友達と共有協力して、一つのモノ・サービス作るインタラクションがあるからです。

まだこれからのチャレンジではありますが、サンドボックスの活用によって湘南エリアを観光地としてだけではなく、新しいアイディアや起業家が集う街にし、「日本初」をこのまちで育て世界に羽ばたかせ、「日本発」のサービスを世界に示していきたいと思います。

星野 剛士(ほしの つよし)衆議院議員(神奈川12区、自由民主党)
1963年生まれ。日本大学卒業後、産経新聞記者、神奈川県議(3選)などを経て、2012年衆院選で初当選(現在3期)。第3次安倍改造内閣では、経産省・内閣府・復興庁の政務官を勤めた。現在は衆院では、予算委理事、経済産業、原子力問題調査特別委、政治倫理の確立及び公選法改正に関する特別委の各委員、自民党では、国会対策委員会副委員長。公式サイト