「福島」が「チェルノブイリ」から学ぶべきこと

内藤 忍

ウクライナの不動産視察の合間に、1986年の爆発事故でメルトダウンしたチェルノブイリ原発周辺を視察するツアーに参加しました。危険なツアーではなく、安全性に配慮され公式に認められたツアーです。

当日の集合は朝の7時半。17人でバスに乗り、キエフから車で2時間ほどで、まず30キロ圏内のチェックポイントに到着します(写真)。

バスから降りてパスポートチェックを行い、中に入ります。さらに10キロ圏内に入る時にも、もう一度チェックがあります。

ガイドの説明を聞きながら、様々な施設を見ていきます。使われることの無かった遊園地、朽ち果てたスタンドがそのまま残っているトラック競技場。まだソビエト連邦が存在した頃の出来事でしたから、残置された施設には共産主義の影響が色濃く残っています。

爆発事故で原子炉建屋が吹き飛んだ原発4号機には、アーチ型のシェルターがかかっていました。ここでは、普段着のままでバスを降りて写真撮影することも許可されています。

今回のツアーに参加した日本人は私だけでしたが、世界中からたくさんの人が集まり、ツアーのバスは満席でした。売店ではTシャツなどのお土産も売っていました。

現地には、今も4,000名以上の人が事故の後処理に携わっています。決して過去の出来事では無いのです。事故があってから30年以上。いまだにこのように世界の人たちから注目され、事故のことを将来に伝えていくことができる。とても大切なことだと思います。

福島でも原子力発電所の事故があり、いまだに深い爪痕が残っています。

ネットで調べてみると、福島でもNPO団体がボランティアで福島第一原発20km圏内ツアーを定期的に開催しているようです。しかし旅行会社がやっているようなツアーではなく、視察案内料は「寄付」となっています。車も持込が原則だったりして、気軽に参加する感じではありません。

福島でチェルノブイリのようにビジネスとして商業ベースで視察ツアーを始めると

「事故を食い物にするのは不謹慎」
「人の不幸に付け込む金儲け」
「現地の被害者の気持ちを考えろ」

といったネガティブな反応が返ってくるかもしれない。それを恐れて商業ツアーの実現に二の足を踏んでいるのかもしれません。

しかし、私のような原発の素人が事故のことを知り、自分なりに考えるきっかけを与えてくれるのは、今回参加したような誰でも気軽に参加できる一般のツアーです。もし、ボランティアがやっている寄付で参加する視察なら、きっと参加することは無かったと思います。

サステイナブル(持続的)に世界から注目を浴び続けるチェルノブイリから福島が学ぶべきこと。それは、福島がこれからも世界に情報配信を続けられるための戦略的な方法だと思いました。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年7月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。