ストーリー的プレゼンの実例②

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David Valenzuela/flickr(編集部)

前回に引き続き、今回はストーリー的プレゼン手法で、かの有名なキング牧師の演説を説明しよう。
キング牧師の演説の全文を引用すると長くなるので、ごく一部の引用に止めた。

絶望の谷間でもがくことをやめよう。
友よ、今日私は皆さんに言っておきたい。
われわれは今日も明日も困難に直面するが、それでも私には夢がある。
それは、アメリカの夢に深く根ざした夢である。

私には夢がある。それは、いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢である。

ストーリー的プレゼンの最初の要件である「絶体絶命ピンチパターン」は、「絶望の谷間でもがくことをやめよう」に表れている。当時の黒人差別は、貧困や犯罪、社会的軋轢の大きな原因となっていた。

このままでは、黒人だけでなく社会全体が分裂してしまう「絶体絶命ピンチ」の状況にあることを示している。

次の要件である「聞き手に解決能力がある」という点は、聴衆が動けばいずれ人種差別を撲滅することができるということだ。

本演説では「夢」と語っているが、「私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住む」という具合に将来像が具体的に表現されている。
引用しなかった部分にも、具体的かつ詳細な将来像が描かれている。
紛れもなく、聞き手に現状を打破する「解決能力」があることを前提とした演説だ。

最後の要件は「大義」だ。
「それは、アメリカの夢に深く根ざした夢である」という部分に明確に表れている。
決して黒人だけの夢ではなく、「アメリカ全体の夢に由来するもの」であることを明確に織り込んでいる。

興味のある方は、全文をお読みいただきたい。
過酷なまでの人種差別が横行した時代のアメリカで、多くの人々を感動させたスピーチにも、しっかりストーリー的プレゼンの要素が組み込まれていることが理解できるはずだ。

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荘司 雅彦
講談社
2006-08-08

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年7月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。