日銀は7月30、31日に開催される金融政策決定会合で、物価動向を再検証する。雨宮副総裁は朝日新聞のインタビューで、「もう一度物価が上がりにくい理由、物価観の形成の仕方などを点検する。物価動向について何が起きているのかをきちんと詰める」と語っていた。今回は検証ではなく点検という位置づけである。
このインタビューで雨宮副総裁は、物価の伸び悩みは先進国に共通するとし、「『アマゾン・エフェクト』と呼ばれるネット販売の物価引き下げ効果」などを理由に挙げた。日本では人手不足でも賃上げは非正規雇用が中心で、正規雇用では雇用安定を重視する傾向が強いとも指摘。「労働需給の引き締まりが賃金上昇に及ぶのに時間がかかる」と述べていた。
日銀はアマゾンなどのインターネット通販の拡大に伴って、消費者物価指数(除く生鮮食品、エネルギー)の伸び率が0.1~0.2%程度押し下げられるとする試算結果を公表している。ネット通販との競合度が高いとみられる日用品や衣類には、0.3%程度の押し下げ効果があるとの結果も出している。
日経新聞の記事によるとドラッグストアーが医薬品だけでなく食品でも安値をけん引していることで、消費者物価指数を0.1%ほど押し下げているとの試算も出ていた。
企業業績が上向いているにも関わらず、それが賃上げには回りづらくなっていることも確かで、例えば日銀が27日に発表した資金循環統計(速報)によると、2017年度の民間企業(金融を除く)の資金余剰が27兆6672億円となり、2016年度から10兆円あまり増え、7年ぶりの高水準となった(日経新聞)。
世界経済の拡大基調が寄与して国内企業の業績も伸びてはいるものの、余剰資金は賃上げや設備投資には向かわず、今後のリスクも意識してか内部にため込まれている。日本企業は自力で収益を上げているというよりも、欧米を主体とする景気拡大という他力によって、業績が向上していることもいえることで、無理に勝負に出ることはせずに、国内でのポール回しに徹しているようにもみえる。
これらの状況を打破するために、果たして日銀の異次元緩和はどれだけ有効なのか。そして、グローバルスタンダードとされる物価目標の2%という数字は適切なのかも本来であれば、再検証する必要はないのか。
日銀が2013年4月に異次元緩和を決定してからの物価の動向も検証する必要があろう。日銀の緩和策が強力に物価に働きかけるのであれば、他の要因によってそれが阻害されることは考えづらい。2014年4月の消費増税が物価低迷の要因と指摘する声も出ているが、これについても検証してほしいところではある。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年7月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。