ビジネス心理学をご存知だろうか。よく知られているものに、アサーティブ、フレーミング、バーナム効果、コールドリーディングなどがある。心理学は「人問心理を解き明かすもの」だが、知っているだけでは役にたたない。大事な場面で、「使える」という実践的なレベルにまで高めておかないと、中途半端な知識で終わってしまう。
今回は『モテすぎて中毒になる男女の心理学』(すばる舎)を紹介したい。著者は、神岡真司さん、累計140万部を超すビジネス心理学の専門家として知られている。主要著書としては、30万部ベストセラー『ヤバい心理学』(日文新書)がある。
いつまでも引きずる男性心理
「学歴コンプレックス」という言葉がある。学歴は一生ついてくるものではあるが、学歴で人生が決まるわけではない。コンプレックスに縛られてしまうと自由に人生を歩めなくなるが、「学歴コンプレックス」に悩むのは圧倒的に男性である。
「偏差値コンプレックスに悩まされている男性は多いです。会社組織などに属している人ほど、定年までその呪縛から離れにくいのです。女性で学歴コンプレックスをもっている人は、ほとんど見かけません。女性の中には、模試で東大に合格確実の成績なのに、わざわざ学費の高い慶応や上智に行くといった人さえいます。」(神岡さん)
「頭脳明晰とか、東大出身といった看板が、男性中心ヒエラルキーの社会では、邪魔になるとさえ考える女性が少なくないからです。男性はとりわけ過去の『失敗』にこだわります。受験の結果である大学の偏差値などにこだわるのも、まさしくこの体験によるものです。『狩猟』で結果が出せなかったことと同じだからです。」(同)
受験と狩猟を比較するとわかりやすい。さらに、神岡さんは、原始の時代のDNAを、子どもの頃から引きずって大人になっているからに他ならないと解説する。
子どもの大学受験は、獲物の収穫そのもので、大学の偏差値が低いのは、狩猟の能力が低いというレッテルを貼られたも同じと思うからなのです。『狩猟の失敗』=学歴や偏差値の低さと無意識に結び付けてしまうからです。男性中心ヒエラルキーの社会ゆえに、過去の「失敗」でもある学歴や偏差値をえんえんと引きずってしまいます。」(神岡さん)
これは、恋愛も同じと考えることができる。恋愛の失敗(つまり失恋)は、狩猟の能力が低いことと同じ。恋愛で引きずるのは圧倒的に男性というのも理解できる。
「女性脳」を理解しよう
女性の場合は共感が大事なので、学歴が邪魔になることはあっても、男性の場合のような意味は持たない。女性は男性のように「収穫の結果」にこだわることもない。
「男性は物事の『プロセス(過程)』よりも『結果』がすべてです。単細胞で融通が利かないのです。仕事に失敗しただけで、ずっと引きずって落ち込んでしまいます。女性は、『プロセス』重視ですから、過程における『楽しさ』『苦しさ』『面白さ』『厳しさ』『爽快さ』といった感情を揺さぶられる経験のほうに意味を見出します。」(神岡さん)
「男性は、ともすると話の展開が『自分』中心ですが、女性の場合は『みんなは』といった視点が多く入り込んでいます。女性は、物事の帰結や結果にこだわるよりも、『みんながどうだったか』といった視点で、物事の価値を推し量っているのです。男性は、女性の柔軟なこうした視点を見習わなくてはいけないでしょう。」(同)
男性視点は、一つの結果がダメだったら、すべてが台無しと考えてしまう。これでは、柔軟な展開は望めない。しかし、男性は女性よりも論理思考である。過去の失敗から学ぶことも得意である。失敗は誰にでもあること、人生にはいくらでもチャンスがあることを理解して切り替えていくことが大事ということになる。
本書は、男女の関係に特化した心理テクニックが紹介されている。 恋愛、夫婦問題、仕事のベースも人間関係によるもの。面倒な異性を黙らせ、社内で評価されるには心理学を理解しておきたい。心当たりのある方には早めの処方をおすすめする。
尾藤克之
コラムニスト