これではブラックボックス再び。行政手続きをすっ飛ばしていけない理由

都知事Facebook、KADOKAWAサイトより:編集部

こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

昨日のドワンゴ・川上量生氏に関する記事については大きな反響をいただき、また御本人からも反論がありました。

論点は多岐にわたるものでありますが、取り急ぎポイントを絞って意見を返したいと思います。

こちらのツイートに、ほとんどの含意は込めさせていただきましたが。

川上さんのおっしゃることは理解できますし、できる限りその能力をフリーハンドで使わせてあげたいとも思います。また、私利私欲のためではなく、純粋に東京五輪大会成功のために骨を折ろうとしてくださったことも事実なのでしょう。

そして、担当された生活文化局の現場の皆さんと話していく中で、これは私の思い込みもあるかもしれませんが、私が邪な私心からではなく、本当にオリンピックの成功に協力したいと思っているだけであるということを信じていただけたと感じました。少なくとも信じるというリスクを取ることを決意していただけた。(川上氏ブログより抜粋、強調筆者)

(川上氏の主張によれば)東京都職員たちはそんな川上氏を信じて、彼が力を発揮するために、公募した広告代理店を迂回して事業を発注するという、公務員としてのコンプライアンスに抵触するグレーなスキームを考案・実行しようとしたわけですね。

そこだけ見れば、確かに部分的には美談かもしれません。その流れに横槍を入れて事業を頓挫させた議員こそ「悪者」だと受け取る人もいるでしょう。

しかしながら、これは川上氏が繰り返し主張しているように、川上氏や都の職員が無心で公のために行動しているという前提があって初めて成り立つものです(そしてその前提は、外部から確認することは現時点でも不可能です)。

もしこれが、五輪事業を食い物にして、私利私欲を肥やそうとする事業者だとしたらどうでしょうか。

その人物のために事業が発注できるよう、彼らと癒着した邪な都の職員が、骨を折ってグレーなスキームを実施したらどうなるでしょうか。

都民の皆さまが納めた税金・公金が、一部事業者の思惑と都職員の裁量によって恣意的に流用されることになります。

川上氏が新進気鋭のIT企業家だからこそ、どんなスキームであれそのまま突き進んでほしかったと感じるところはありますが、これが典型的な公共事業ズブズブ企業が関わるものであったら、まったく異なる見え方をしたはずです。

今回は都議会からの指摘→川上氏の告白という流れによって明らかになったものの、このプロセスは外部からは極めて見えづらいため、通常であれば都民の目にふれることはありません。

こうした「水面下」での裏取引を防ぐために、競争入札(プロポーザル方式を含む)なり公募なりという「公平性を担保する手続き」があるわけで、民間企業と異なり税金を原資として行動する行政は、いくら「非効率」だからといってそれを無視することは許されません

もちろん私とて、現時点での「手続き」に問題がないとは思っていません。透明性・公平性を担保しながら、民間の活力をもっと自由に奮ってもらう方法はあるでしょうし、それは今後も模索していかなければなりません。

しかし行政の「公共調達」には一定の限界があります。だからこそ公共事業は縮小し、とりわけ経済活動や広報事業に関しては行政はあまり主体とならず、完全に民間に任せる路線を徹底していくべきだと考えています。

この点については、議論が拡散しすぎてしまうので、またどこかの機会に改めて述べたいと思います。

そして最後に。

以下の内容にはまた「政治利用だ」という批判があるかと存じますが、これは議会の責務であり、私のこれまでの活動・政治信条にも関連することでありますので、小池知事についても述べたいと思います。

実はドワンゴのスタッフは一切使わないでプロデューサーをやって欲しいという話が最初に出たのは都知事サイドからです。まだ、昨年末の統括プロデューサーの就任が発表される以前のことです。それでは僕が統括プロデューサーとしてやろうとしていることは実現できないということを、私だけでなく生活文化局からも説明していただけました。結果、知事も批判されるリスクをとって、私の望む体制を作ることを決断されたわけです。

川上氏ブログより抜粋、強調筆者)

この川上氏の言うことが真実だとすれば、小池知事自身も今回の「グレーなスキーム」を最終的には承認していたことになります。

最初は「スタッフを一切使わないでやって欲しい」と提案していることから、このやり方に「後ろ暗い部分」があることを、知事自身はわかっていたのでしょう。

入札制度改革やあるいは豊洲市場移転の意思決定において、こうした「水面下」での裏取引を誰よりも否定していたのは小池知事自身だったはずです。

こうした都政におけるやり方を「不透明なブラックボックス」と糾弾し、都民からの圧倒的支持を集めたのが小池知事だったのではないでしょうか。

私自身、そうした小池知事の主張・政治理念に共感したからこそ、昨年の百条委員会では尖兵となって「水面下」での様々なやり取り・意思決定を批判してきました。

だからこそ私は、小池都政においてこのような疑惑が発生したことを軽々に見過ごすことはできません。

本件については引き続き、知事および東京都側の説明・主張に注視しつつ、また都民の皆さまにもご報告していきたいと思います。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年7月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。