ある人に気に入られたい時、多くの人たちは相手が好むことをする。
贈り物を送ったりお金を貸したりするのは、その典型だ。
ところが、かのベンジャミン・フランクリンは正反対のことをやった。
議会でフランクリンを激しく非難した人物に対し、フランクリンは「あなたの本を貸してくれないか」という手紙を送った。
手紙を出してから二度ほど相手から本を借りたところ、相手の態度は一変し、フランクリンに好意を寄せるようになった。
世に言う「フランクリン効果」というもので、「本を貸すという親切な行為」と「それまでのフランクリンに対する敵対心」が矛盾して認知不協和を起こし、感情を行為に合わせることによって不協和を解消するというものだ。
一言で言えば、親切な行為を行うと、相手に対して「好意」を抱くという心理的効果だ。
逆の場合も同じで、自分が誰かに親切な行為をしていると、いつの間にか相手に好感を抱くようになる。
気分が塞いでいるときに、意図的に笑顔をつくって鼻歌を歌えば、自然に楽しい気分になってくるのと同じだ。
人の感情を変えるのは難しいが、簡単な行動を起こさせるのはさほど困難なことではない。
オフィスであれば、「ちょっとペンを貸してくれない?」とか「その資料、今使っていないなら見せてくれない?」というふうに、簡単な頼み事ができる。
相手に負担を与えない「親切な行動」を起こさせれば、相手のあなたに対する感情は(少なくとも)敵対的なものではなくなるだろう。
問題社員を説得するための下地作りとして、私が音声配信のリスナーに勧めた方法だ。
「フランクリン効果」は、多くの場面で有効活用できる。
「教えて欲しい」というのは、極めて効果的な方法だ。
人間誰しも、自分が詳しい分野については「教えたがり屋」だ。
教えを受けているうちに、相手があなたに好感を抱くようになること請け合いだ。
ただし、専門家に専門領域のことを教えて欲しいと頼む場合は慎重さが必要だ。
専門家は専門知識によって金銭的報酬を得ているので、(親しい関係でもない限り)いきなり「教えて欲しい」と頼むのは、有料商品を只でくれと言っているのと同じだ。
「知り合いからの無料相談を断れずに困っている」という弁護士の悩みを聞いたことがある。
私も、かつて夜中に自宅に相談の電話をかけてくる(疎遠な)知人がいたりして、悩まされたことがある。
専門領域で間違ったアドバイスをすると責任問題になりかねないし、仕事上の評価が傷つくこともある。
無視するのが一番だ。
それで離れていく知人ならいなくても困らない。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年7月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。