子供のころ祖母から「仕事をやり遂げるためには忙しい人に任せなさい」と教わりました。本当に忙しい人よりも、実は暇な人の方がいつも時間がないと言っているものです。要するに、忙しくない人というのは怠惰で時間管理能力が低いのです――之は、著名投資家のジム・ロジャーズ氏(1942年-)の言葉とされるものです。
最近も「ハーバード大学ビジネススクールのニティン・ノーリア学長とマイケル・ポーター教授が、大企業のCEOの時間の使い方に関する研究結果を発表」しましたが、此のタイムマネジメントというのは、ある意味非常に難しい問題であります。
例えば、ウォーレン・バフェット氏の場合は「スケジュールを極力簡潔化」し「そのほかの仕事は臨機応変に優先順位をつけて対応している」ようです。対照的に、ビル・ゲイツ氏の場合は「過密なスケジュールを最短で5分単位にまで細分化し、(中略)また自分が目を通すべき重要なメールを部下により分けさせるなど、様々なタスクで優先順位を決めている」ようです。
上記につき一点、気になります。世界でも指折りの成功者であるゲイツ氏に反論するのは恐縮ですが、率直に申し上げて重要なメールか否かの判断を部下が下せるとは私には思えません。ある範疇に関し基本的には人任せにせず、全て自分で目を通すべきだと思います。その為そもそも夥しい数のメールが来ないよう、自分のやっている対象を絞り込んで行かねばならないでしょう。
私自身の場合を考えてみても、やることは自分でどんどん広げているような気がします。だから多忙極まるのは当然として、片一方で削って行くということもしています。新しい仕事が始まり優先順位を高く置くとしたら、古い仕事でそれが低くなったものを削って行く作業が必要だと思います。
そうでないと益々メールは増え、人任せにしないといけない案件が増えて行くからです。私は、捨てるとか省くということは、何でも彼んでも付け加えることよりも大事な思考だと思っています。正に耶律楚材(やりつそざい)の言、「一利を興すは一害を除くに若かず。一事を生ずるは一事を減ずるに若かず」の通りであります。
私は嘗て『時間の配分』(08年2月25日)というブログの結語で、「海外への出張と、そして国内の膨大な仕事に追われるという毎日が続いており、そのために仕事の優先順位付けと、時間の振り分けを綿密にやっています。そして土日休日も可能な限り有効に時間を使うべく、今は仕事一点に標準を合わせて、働いていこうと思います」と書きました。
相も変わらず仕事一点に標準を合わせて働き続けているわけですが、自分が最重要だと思うことにより多くの時間を割き、人任せにするようなことは基本ありません。勿論それは、人を信用しないからではありません。それは、グループ全ての経営に関するありとあらゆることを頭に入れ、短期的・中期的・長期的にどうかを勘案しながら瞬時に終始先後を判断できるのは自分以外に、やれないと思うからです。
BLOG:北尾吉孝日記
Twitter:北尾吉孝 (@yoshitaka_kitao)
facebook:北尾吉孝(SBIホールディングス)