「印鑑至上主義」はもうやめよう!

内藤 忍

日本国内の仕事における契約では、印鑑が頻繁に使われます。

確かに契約者同士の意思確認が重要な書類であれば、印鑑証明書を拠り所として、実印(印鑑登録されている印鑑)とセットにして、本人の意思確認をする。これには合理的な理由があります。

しかし、印鑑にほとんど意味が無いにも関わらず、印鑑が無いと仕事が進まない「印鑑至上主義」とも言えるような慣行もなかなか無くならないのです。

例えば、不動産の買付を入れるときの買付証明書というものがあります。買主の意思を確認するのが目的ですが、必ず印鑑を要求されます。しかし、印鑑はいわゆる三文判でも問題なく、誰でも書類を作ろうと思えば可能です。印鑑はどこでも簡単に手に入りますから、印鑑を押す必要性は無く、サインでも充分です。

請求書を発行する場合も、請求書さえ必要ないという会社、印鑑を押した書類をPDFにしてメール添付でOKな会社、印鑑を押した書類を郵送しなければならない会社と分かれますが、実印を求める会社はありません。印鑑のあるなしに関わらず、悪意があれば偽造は簡単にできます。

さらに、こんなこともありました。

印鑑には、丸印と角印があります。角印とは請求書などに押す、重要度の低い書類に押されるとされていますが、印鑑の形が丸くても実印でなければ、その意味は丸くても四角でも変わらないはずです。

ところが、とある会社は契約書に角印を押して返送したら、丸印でなければ社内で認めてもらえないと、印鑑を押し直すためにもう一度担当者がわざわざやってきました。丸印なら認印でも問題ないと聞いて、何とも呆れました。

とにかく印鑑さえ押してあれば、それで何となく安心というのは、何とも不可思議なだけではなく、仕事の効率化を阻害します。

印鑑が無いと仕事が進まないと、海外に行ったりすると更に不便です。いつ書類に印鑑が必要になるかわからないとなると、印鑑と朱肉をいつも持ち歩かなくてはなりません。原本が必要な場合は、時間もコストもかかってしまいます。一刻を争う契約になると、このスピードの遅さは致命的です。

実印を必要とする取引はともかく、それ以外の意味のない印鑑至上主義は、早くやめた方が良いと思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年8月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。