最近、マナーに関する書籍が増えたように感じている。新入社員研修では必須項目として位置づけられている。昭和の時代であれば、家庭内で教えられていた。しかし、家族形態の変化によって、近年ではマナーを学ぶ機会も減ってしまった。本来なら、子どもの時に見につけておくべきものが少なくない。
今回は、『10歳までに身につけたい一生困らない子どものマナー』(青春出版社)を紹介したい。マナー講師の西出ひろ子さん、川道映里さんの共著。西出さんの実績としては、28万部のベストセラー『お仕事のマナーとコツ』(学研)、「NHK大河ドラマ・龍馬伝」のマナー指導など幅広い。日本でもトップクラスのマナー講師として知られている。
電車のマナーできていますか
先日、電車に乗車する際、我先に人を押しのけて座るサラリーマンを見かけた。灼熱の太陽から逃れたい気持ちは痛いほどわかる。しかし、もし、子どもが見ていたらどのように思うだろうか。自分の子どもにこの姿を見せられるのか。
「乗り物の中は運動場ではないよね。降りる人を優先させてから乗るのがかっこいいねと教えるようにしましょう。『電車やバスなどの乗り物に乗ろうとするとき、降りてくる人がいたら、どうしてるの?降りてくる人を押しのけて自分が乗ろとしたら、押し競饅頭(おしくらまんじゅう)になってしまうよね。降りたくても降りられないし、乗ろうとする人も乗れないよね』とわかりやすくイメージさせてください。」(西出さん)
「また、押し競饅頭になると、電車とホームの隙間に足をはさむ危険性があります。『危ないから電車やバスに乗るときには、降りる人が先で、乗る人が後なんだよ。もし、みんなが降りようとしているときに、それを無視して乗ってくる人がいたら、どう思う?とても迷惑だから、お互いを思いやろうね』と話せば理解できることでしょう。」(同)
「お互いを思いやる」とは「相手の立場にたつ」こと。マナーには、相手がどう思い、どう感じるかを察して、自分のとるべき行動を調整する目的がある。たとえば、女性が電車の中で熱心に化粧をする姿をよく見かけるが、これが非常にみっともないのは、化粧という”舞台裏”を公の場で見せることに恥じらいがないからである。
「電車などの公共の場所では、自分の欲求をおさえることが大切なのです。基本的に、電車やバスなどの乗り物内では、お化粧は控えます。マナーはお互いさまですから、マナーは寛容な心を持つことも大切です。一方で、自分が問題の原因とならないような配慮をすべきです。人は、相手を思いやるマナーを意識することで心を磨き、礼儀や作法、臨機応変な心配りができる知識や教養を身につけることができます。」(西出さん)
「さらに、それらを知恵として自分の生活と人生に役立てていくことです。最も大事なことは、それにとらわれることなく、相手が望み、喜んでくれることを提供し、その結果、貴方自身もプラスを得ることに気づいてください。」(同)
会話のマナーできていますか
皆さまは、次のような経験をしたことはないだろうか?
自分:「昨日、ようやく話題の映画○○を見てきたよ!感動したよ!」
相手:「僕も先日見てきたけど評判ほどじゃないね。あれはミスキャスト!」
自分:「マジ、そうなんだ?」
相手:「常識だよ。○○や△△と○△でさ。そんなの知らないのかよ!!」
自分:「へえ~(少しイラッとしている)」
相手:「残念なヤツだなあ。うんちゃらかんちゃらで~ほにゃららで~」
自分:「・・・」
いわゆる、これが、「会話泥棒」である。どんな内容でも、強引に自分の話のように奪い持ち去り、不快にさせるテクニックは、まさに「お見事!」としか言いようが無い。実は、この原因は「子ども時代」にあるのかも知れない。
「誰かと楽しく話をしているときに、割りこんできた時の状況を理解させましょう。『人と人とが話をしているときに、割り込むのはマナー違反。せっかく話をしているのに、ほかの人が話しはじめたら、その場のペースやリズムが乱れてしまうよね。だから、話に加わりたいときに割り込んではいけないんだよ』と諭してください。」(川道さん)
「そのうえで、『お話が終わるのを待ってからにしようね。そして、まずは“一緒に、お話してもいい?”とか“仲間に入れてもらえる?”と聞いてみましょう。そして、了解をもらったら、話に加わろうね」と説明することで理解が深まります。」(同)
本書は子ども向けに書かれているが、ケースにリアリティがあることから大人にもおすすめできる。上司のコネタとしても役立ちそうだ。多くのケースを理解することで物事の正しい道筋を見つけられるかもしれない。
尾藤克之
コラムニスト