影が薄くなった検察
森友学園、加計学園、文書改ざんの騒ぎが下火になったと思ったら、今度は東京医科大学、ボクシング協会、学生スポーツの処理のまずさで躓いた日本大学と、トップの責任が追及される不祥事が次々と表面化しています。その前には民間企業のデータねつ造事件が相次いで発覚しました。
並べてみると、政界、官界、民間企業、大学・学園、スポーツ団体など次々ですね。日本の骨組みがあちこちで老朽化し、人事権を握ったトップがかろうじて隠蔽してきたのが、デジタル化・ネット化が急激に進み、内部告発、情報拡散、旧弊の暴露を一気に広をげられるようになったためでしょう。
検察のトップが「巨悪は眠らせない」と、頑張っていた時代もありました。その検察も政治に人事権を握られ、元気をなくしているうえ、民間側の内部告発、情報拡散のスピードに先行され、民間側で自主的に処理されることが増えてきたように思われます。検察の存在感は落ちる一方でしょうか。
日本の各種の組織、団体では、人材の移動、交流が欧米に比べて極端に少なく、権力にしがみつきたいトップがいるところほど、人事権を振り回し、旧悪、旧弊が温存されます。これも日本社会の停滞、経済の低成長の大きな一因になっていると、思います。
アナログ時代との違い
アナログ式の時代は、情報、資料の作成が手書きで行われ、うっかり内部告発をしようものなら、情報源を特定され、不祥事を暴露した者が逆に痛い目にあってきました。内部告発(内部通報)制度が法制化されてきたとはいえ、トップに伝えられると、黙殺されることが多かったでしょう。
東京医科大学の入試で、文科省局長が大学に便宜供与をする対価として、息子の入学を認めさせ、贈収賄事件として立件されました。ここで一段落するのかと思っていましたら、試験の点数の加算、減算という不正行為が広範囲に行われていたことが芋ずる式に発覚しました。女子に対する差別、同窓会(OB)の仲間に対する優遇措置など次々に不透明な行為が暴露されつつあります。
消したつもりでも、結局、どこかのパソコンに保存されていたのですかね。パソコン・データは組織内部で極秘に保管しようとしても、組織内部で共有されると、全部を覆い隠せるものではありません。元首相秘書官が「首相案件」と述べた文書も、愛媛県側で見つかりました。一連の文書改ざん事件で、官僚らが「記憶にありません」と申し立てても、どこかに入力されていたのでしょう。
トップは交代期を誤るな
日本ボクシング協会の山根会長が結局、辞任に追い込まれました。本人の暴力団との交友は論外としても助成金の流用、審判に対する圧力など、公平性を欠く組織運営はひどかったですね。アメリカンフットボールの違法タックル事件は、不正そのものの指示、不正な指示が発覚した時の隠蔽に問題がありました。日大のトップはまだ居座るつもりでしょうか。
山根会長の場合は、不正ジャッジの指示が音声で録音されています。ダウンを食った選手のほうが勝ったシーンもビデオに残っています。日大の場合も、音声録音がありましたね。デジタル時代は、文字データに限らず、映像も音声も残り、不祥事を追及する決め手となります。各種のデータがネットで拡散すれば、メディアにも一斉に取り上げられ、抗議が殺到し、ごまかし通せなくなります。
問題点を整理すれば、「日本のシステムがあちこちで腐っている」、「各種のデータ、資料がデジタル化で残しやすくなった」、「内部告発をしやすくなり、メールで外部に伝達したり、ネットで拡散したりしやすくなった」などがあるでしょう。「記憶にない」といっても、映像録画、音声録音もデジタル化で容易になっており、巨悪が追い詰められる不祥事はこれからも増えていくでしょう。
ネット時代は偽情報(フェイクニュース)も大量に流されるので、ファクトチェック(事実確認)が当然、必要です。それをきちんとやれば、巨悪追放、組織・機構の近代化に役立てることができます。巨悪もゆっくり眠ることができない時代になりました。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2018年8月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。