責任を押し付けられた?マネジメント層を刷新し再教育せよ

画像は書籍書影(筆者撮影)

「計画を立てられない」「立てるのが面倒くさい」「立てなくてもどうにかなる」。そんな計画アレルギーで仕事のレベルも能力もズルズル停滞してはいないか。適切な計画を立てて自分の役割を遂行するコンピテンスが「計画力」として注目されている。計画力は一朝一夕には身につかないため、普段から鍛えていくことが必要だ。

今回は、『チームでも、個人でも、ムダなく滞らせず結果を出す計画力の鍛え方』(すばる舎)を紹介したい。著者は、会社員でありながら、ベストセラー作家で研修講師などをつとめる、中尾ゆうすけさん。人事マンの、中尾さんが会社組織のなかで実際に経験したことがベースになっているので、かなりリアルな仕上がりである。

うまくいかない仕事は計画段階でわかる

中尾さんは、これまで製造業の技術職や製造管理といった仕事を経て、サービス業で人事という仕事に携わってきた。失敗には次につながる失敗と、ただ損するだけの失敗がある。ムダな失敗をしないために必要不可欠なものは「計画」しかないと主張する。

「多くの新製品、新事業のプロジェクトに関わってきましたが、振り返ってみると、そのプロジェクトがうまくいくかどうかは、計画段階でほぼ見通しがついていたのです。うまくいかないプロジェクトには、必ず計画に不安がありました。」(中尾さん)

本書のなかで6つのケースを挙げているので紹介したい。
(1)結論ありきのトップダウンで、十分な市場調査が行われないまま製品化された
(2)一応計画は立てたものの、その実現性を未検証のまま進めてしまった
(3)納期に押されてギリギリの中で品質の維持が難しかった
(4)具体的に何をするべきかが不明確で、迷走してしまった
(5)リスクの想定が甘く、トラブルによる納期の先延ばしが繰り返された
(6)状況が変化していたのに、当初の計画の見直しを怠っていた

「つまり、失敗の多くが『計画』に起因していたのです。なかには、現場の協力が得られないなど、一見、人間関係やチームワークに問題があるようなケースもありました。しかし、そうなった背景には、納期にムリがあるとか、最初からメンバーの多くが仕事の進め方に納得していないなどの事情がありました。」(中尾さん)

「仕事がうまくいかないときには、たまたま問題が生じたか、自分の仕事のやり方が悪いのだと思っていて、計画のほうに問題があるとは考えていませんでした。自分なりにやりましたがなかなか報われませんでした。もともとの見通しが甘いのに、どんなに頑張ったところで計画通りに仕事が進むわけがなかったのです。」(同)

マネジメント層を刷新し再教育せよ

筆者は、計画を遂行するにはマネジメントの問題が大きいと考えている。上司は計画が順調に推移しているか概ね掌握できている。問題なのは、順調でなくなったときの腹のくくり方である。私は、コンサルタントとしていくつかの場面に遭遇したことがあるが、責任を放棄して部下に押し付ける上司の多いこと。へきへきすることもあった。

----ここから----
部長「中尾君、僕は別件の対応があるのでゴクアク商事の件、よろしく頼むね!」
中尾「ゴクアク商事は部長の担当ではありませんか。私でいいんですか?!」
部長「問題ないよ。君が頑張っていることは常務にも伝えておくよ!!」
中尾「承知しました」
--<数日後、常務に呼び出される>--
常務「ゴクアク商事の件だが、なんで受注額が3割もカットされたの??ん」
中尾「じゅ・・受注額のカット?聞いておりませんが??」
常務「ハァ?いま、部長に確認したよ。君がメチャクチャにしたそうじゃないか!」
部長「君には期待をしていたが甘かったようだ。非常に残念だ!!」
中尾「そんな、、、、受注額の話なんてまったく聞いてません!」
部長「なにを言うか!お前はクビだ!」
中尾「・・・・・・」
----ここまで----

このような、無責任な上司を排除して組織を刷新するには、会社の理念、組織の方針、仕事の目的やポリシーを明確化したうえで、マネジメント層を再教育するしかない。少なくとも、マネジメント担当者は、全体が見えている人でなければいけない。会社や組織として何が大事で何がそれに付随することなのかを理解することである。

「うちの会社には計画力がない」「いつも行き当たりばったりだ」と思ったら、じっくり考えよう。アクション次第で環境が是正されるのなら素晴らしいことだ。そして、アクションを考えるには、実用的な計画の立て方と使いやすいノウハウが必要になる。本書は、計画力の勘所が、初心者にも使いやすく解説されている。

尾藤克之
コラムニスト