高校野球を早急に全席指定席にすべき事情

奥村 シンゴ

近年の高校野球人気で土・日やお盆休みや人気カードになると、徹夜や早朝から並ばないとチケットが取れないことも少なくない。

今年も高校野球開催前の甲子園を視察してきたが、内野席・外野席共試合前夜から徹夜で並ぶ人達が後を絶たず、今日も7時15分に満員通知が出た。

甲子園は7時15分に満員!全座席売り切れ : スポーツ報知

今後大会が進むにすれ、自由席を求めさらに過熱なチケット争奪戦になり今年の酷暑も重なり熱中症等の急病人の増加や死人が出ないか懸念される。

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現に大会初日から熱中症で生徒・観客・選手に続き、昨日は審判まで熱中症になり、大会前半にして高野連や朝日新聞が公表した人数だけで50人近く。

球場外で当日券を求め並ぶ人の中での熱中症は把握していないのか隠蔽したいのか知らないが、公表や報道されることはない。

高野連や朝日新聞は早急に全席指定席にすべき事情を現場視点から考察していく。

野球みたいと泣く子供、帰らせる親 これが本来の高校野球の姿ではない

私は高校野球を毎年観戦しかれこれ25年は経過するが、球場内でお年寄りが突然足をつっているかと思えば、すぐ近くで若い女性が吐いていたり、球場外では「お母さんみたい、みたい」と泣き叫ぶ子供に「こんな暑い中で熱上がったらどうすんの?かえるで」と帰宅させるというような光景を数々みてきた。

球場周辺の自由席販売窓口周辺には、新聞紙などに名前や人数を書き、シートを貼って待っているファンが大勢いた。

甲子園球場の内野周辺はコロワ甲子園、外野周辺にはららぽーと甲子園という2つの大きなショッピングモールの他に、マクドナルドやアズナスというコンビニや自動販売機やトイレも数箇所ある。

私のように何度も行列に並ぶファンはある程度どこになにがあるかわかり、すぐ買いに行ける健常者ならいい。

ただ、例えば初観戦を一人でする人は食料品を買いこんでおかないと折角並んでいても再度並ばないといけなかったり、子供や障害者やお年寄りや女性への配慮は不可欠だ。

指定席の存在を知らない人が多い

高校野球は数少ないが指定席があるのを意外と知らない人が多い。

夏の甲子園第100回、指定席通し券6月20日から発売 – 高校野球:朝日新聞デジタル

希望日のみ入場できる「単日券」、開幕日から決勝日までの入場券をまとめた「通し券」、「企画席券」がある。

今年も6月から7月にかけてWEBや店舗で発売が開始され、「単日券」中央特別指定席(大人・子供2800円)、1、3塁特別自由席(大人2000円、子供800円)、「大会全試合の通し券」中央特別指定席(大人・子供共44000円)、1、3塁特別自由席(大人・子供共32000円)などとなっている。

また、今年からバックネット裏が全席指定席に変更するなど高野連は混雑緩和にようやく動き出してはいる。

全席指定席への課題

ただ、大部分は自由席で全席指定席にするには課題がある。

一つ目はチケットの転売問題だ。

今年の高校野球の前売りチケットは、ネットオークションなどで高値で転売されるケースが多々みられるが、アーティストのライブのように本人確認を強化すれば何ら問題ない。

二つ目は予算的な問題があるだろう。

16日間(今年は17日間)1試合4試合の日も多く、球場での本人確認の手間や指定席で抽選・店頭・電話販売となると、人件費は膨らむ。

今年から混雑緩和にむけ、外野席が大人500円・こども100円、1、3塁特別自由席が大人500円・子供が200円と今春大会までの無料から有料に値上げされたが、さらなる値上げも致し方ないのかもしれない。

しかし、その際は高野連が大会ごとの売上を明示し、ファンに納得させてからにすべきだ。

こうして苦労してつかんだチケットを購入しても、再入場できないのだ。

例えば、1試合目と3試合目を観戦したくて、2試合目を近くのエアコンが効いたお店で休憩したいなら、新たにチケットを購入しないといけない。

私も何度も4試合共観戦したことがあるが、体力的に相当きつい。

球場内には扇風機やミストやお店はいくつかあるが、圧倒的に数が少なく、エアコンもほとんど効いていない。

高校野球好きの伊集院光が警鐘 通し券発売で「マイナス面がすごい出ている」― スポニチ Sponichi Annex 芸能

この状況にタレントの伊集院光が警鐘を鳴らしている。

伊集院は「前売り通し券」をネットで事前購入。“4万4800円でチケットを買えば、16日間通しで観戦できる”ようになっており、伊集院は「一番確実に座れる席」として購入に至ったという。

しかしこのチケット、その日入場すると「一切、甲子園から出ることができない」のだという。従って第1試合と第4試合を見たいと思ったら、一日中甲子園に缶詰となる必要があるのだ。猛暑の中で観戦し続けるのは体力的に厳しい。試合の間は「みんな売店とか入ってるところにあるクーラーの前に、亡霊みたいに立ってる。もう魂抜けちゃった感じで」と、伊集院は皮肉交じりに伝えた。

当然、お目当ての試合が終われば帰る人も多い。伊集院はその件についても「もう帰っちゃった人で(席が)空いているのに、表のチケット売り場では『入場券はありません』っていう状況になってんのよ」とため息まじり。「予想通りのマイナス面がすごい出ている」とし「もっとちゃんとした方がいい」と吐露。続けて「(主催者サイドは)世間の風当たりは強いってことを、おそらく何も考えてないんだろうな」と嘆いた。

来年からの開催にあたっては、ドーム、ナイター、年1回、午前中2試合と夕方から2試合開催などファンや関係者から様々な案が出ているが、全席指定席は来年から実現してほしい。

高校野球試合中に死人が出たという報道がいつ出てもおかしくない状況で、折角高校球児・学校・両親など関係者の頑張りで近年急上昇しているのが、台無しになりかねない。

高野連の早急な大改革に期待したい。

奥村 シンゴ フリーライター
大学卒業後、大手上場一部企業で営業や顧客対応などの業務を経験し、32歳から家族の介護で離職。在宅介護と並行してフリーライターとして活動し、テレビ、介護、メディアのテーマを中心に各種ネットメディアに寄稿。テレビ・ネット番組や企業のリサーチ、マーケティングなども担当している。