長期金利の上昇を受けて、個人向け国債(変動タイプ)の利子も上昇

日銀が7月31日に金融政策の微調整を行ったことにより、思わぬところに影響が出ていた。個人向け国債の10年変動タイプの初期利子が、これまで最低保障の0.05%にへばりついていたものから、0.09%(税引き前)に上昇したのである。

10年変動タイプの初期利子が最低保障利回りの0.05%から上昇したのは、2016年2月の0.17%以来となる。

2016年1月の金融政策決定会合で日銀はマイナス金利付き量的・質的緩和の導入を決定した。これで長期金利は抑え込まれ、同年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の決定によって、完全に長期金利はゼロ近辺に押しつぶされてしまった。

これにより国債市場の流動性が後退し、市場機能が低下した。これを危惧して日銀は7月31日の金融政策決定会合で、長期金利のプラス0.2%あたりまでの上昇を容認することになったのである。

長期金利、つまり日本の10年債利回りは8月2日に0.145%まで上昇した。ちょうどこの日は10年国債の入札日であった。

個人向け国債の10年物変動金利タイプは、10年国債の流通利回りによって利子が変動する。今回の8月募集分については8月2日の10年国債の入札結果に応じて初期利子が決定される仕組みとなっていた。ただし、8月募集分の個人向け国債を購入してすぐに利子がもらえるわけではなく、半年先に払われる利子がこの入札結果で決定される。

8月2日の10年国債の入札での平均落札利回りは0.126%。ここから算出された個人向け国債の初期利子が0.09%(税引き前)となった。ちなみに7月3日の10年国債入札における平均落札利回りは0.037%となっており、この時点で最低保障利回りの0.05%に届いていなかった。

個人向け国債は通常の国債のように利回り変動に応じて価格は変動しない。つまり国債利回りの上昇によって価格が下落することはない。10年変動タイプは10年国債の入札時の利回りに応じて利子が変わる仕組みになっており、上昇すればするほど得られる利益が高くなる。

ただし、3年固定、5年固定については今回も最低保障利回りの0.05%のままである。今回の日銀の政策の微調整で長期金利は上昇したものの、短期金利はそのままであった。5年国債の利回りは依然としてマイナスのままとなっている。

今後も10年債利回りについては0.1%を超えて推移する可能性は高いとみられる。それでなくとも元本保証、最低保障金利が設定されている有利な金融商品といえる個人向け国債の優位性がさらに高まる可能性がある。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年8月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。