日銀は7月31日の金融政策決定会合で「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を決定した。フォワードガイダンスを導入するなど緩和強化にも見えるが、その実、長期金利の誘導レンジを±0.1から±0.2%に拡大させることが主眼となっていた。
長期金利、つまり10年債カレントの利回りは、31日の決定会合後でフォワードガイダンスを導入したことなどから、一時0.045%まで急低下してしまった。
しかし翌8月1日には、債券は改めて下値を探るような動きとなった。10年債利回りはじりじりと上昇し0.120%を付けた。
1日の米10年債利回りが6月13日以来の3%超えとなったこともあり、2日の日本の10年債利回りは朝方に0.145%まで上昇した。
この日の14時に日銀は臨時の国債買入をオファーした。5年超10年以下4000億円オファーしたのである。当日入札のあった351回は対象外としたが、これは財政ファイナンスと認識されることを避けたためとの見方もあった。
2日に日銀が指し値オペではなく通常の形式ながら臨時のオペを打ってきたのは何故か。これは31日の決定会合の公表文の補足にも書かれていたように、「金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施」したためとみられる。指し値オペで長期金利上昇を止めるのではなく、通常オペを使って、金利上昇にブレーキを掛けることが目的であった。
2日の債券市場では、この日の10年国債入札が低調な結果となったにも関わらず、このオペが入る前に先物は買い戻しの動きを強めていた。
長期金利はファンダメンタルズと呼ばれる景気や物価動向、さらに海外の金利動向などによって決定される面もあるが、なんといっても需給によって決定されているともいえる。その需給面からみると、10年債カレントはかなりの部分、日銀に吸い上げられている。
通常オペだけでなく、7月30日の指し値オペによって1.6兆円も日銀は10年債を買い入れていた。これは業者が1兆円を超す空売りを仕掛けたとの見方もあり、8月2日の10年国債入札を使ってその多くをカバーしたとされる。つまりこの分も日銀が吸い上げ、さらに2日にも10年債を4000億円吸い上げている。
これらを見る限り、10年債は需給バランスからみて売りづらい。米10年債利回りも低下してきた上に、トルコリラの急落により世界的なリスク回避の動きも出てきたことで、ますます日本の10年債は売りづらい状況にある。
日銀は長期金利の0.2%までの上昇は容認した格好ながらも、現実には0.2%まで上昇するのは10年国債の需給面で見る限り、なかなか難しい状況にあることも確かである。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年8月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。