こういう風に、娘の「情熱大陸」出演を夢見るバカ親父に言われても何の説得力もないと思うが・・・。ダブルスタンダードそのものなのだが・・・。意識高い系の中には「情熱大陸」に出ることを夢見ている奴がいる。意識高い系学生が跋扈していた2010年代前半は、自己紹介の際に「夢は”情熱大陸”に出ることです!」と公言する学生と何人あったことか。
ぶっちゃけ、私も30代前半の意識高い系社員だった頃や著者デビューしたての頃は「いつか出演できたらいいな」と思っていた時期はある。毎週、「情熱大陸」を録画しては、ブログに感想文を書いていたこともある。こうすると、いつか振り向いてもらえるのではないかと思ったからだ。自分の気持ちを高めるためでもある。いや、今思うと痛い以外のなにものでもないのだけど。
たまたまなのだけど、宮川サトシさんの『情熱大陸への執拗な情熱』(幻冬舎) という本と遭遇。
もう、タイトル通りの本で。以前の自分と重なる部分もあり。そうか、「情熱大陸」に憧れる人って、自分が呼ばれたときのために、「忙しいから、(稼いでいるのに)質素な食事ですませている俺」をアピールをするためにカメラ目線で立ち食い蕎麦を食べる練習するんだとか、クルマを運転しながらインタビューを受ける練習をしているんだとか、普段からアサヒスーパードライを飲んでいるんだとか、いろいろ勉強になった。
というか、「情熱大陸」にひたすら憧れる(途中、イヤになったりもしたようだが)主人公(著者の宮川さん)が痛々しすぎて、泣けた。そうか、そこまで出たいものなのか、と。
私の周りでも、数人、「情熱大陸」に出たことがある人がいる。宮川さんの漫画でいうと「上陸」というらしい、出演経験者たちは。「上陸」かあ。健康のために家系ラーメンを食べるのをやめることをさす「出家」、博報堂を辞めることをさす「脱博」、電通にやたらとシンパシーを感じる「感電」、リクルートをやめる「離陸」、サイバーエージェントを辞めて日本酒で祝杯をあげる「脱サイ」同様、覚えておこう。
しかし、23分、自分が紹介されるって大変だな。まだまだ修行が足りないと思った今日この頃。
本のもととなったネット連載はまだ無料で読めるようなので、ぜひ。私の家内は読んで切なくなったというけれど。
…..一時、携帯の着メロを「情熱大陸」にしていたような気がする。あの頃は私も痛い奴だった。
編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2018年8月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。