舞台と映画の制作者間の利害対立は、著作権の範疇だけで解決できるか

どうも従来の著作権の範疇の範囲内だけで考えていては、この問題の根本的解決には至らないような予感がしている。

映画化された創作物と映画化する以前に上演された舞台という創作物の間に何らの関連もないのであれば何も問題にすることはないのだが、上演された舞台を見て得た感動を翻案して映画化した、ということになると、舞台がなければ映画化もないわけだから、映画化によって挙げた営業利益のいくばくかは映画化される以前に上演された舞台にも帰属することにしておかないと、如何にも座りが悪い。

映画「カメラを止めるな!」公式サイトより:編集部

単なるアイデアには権利性がないから、他人のアイデアを盗用しても何の権利侵害にも当たらないから勝手にどうぞ、などとはとても言えない。
フリーライド、薩摩守忠度は、どうもよくない。

映画化される以前に存在した舞台を作り出した方を原作者と表示するのがいいのか、それとも原案者と表示するのがいいのかについては色々考え方はあるだろうが、私は映画化以前に存在した舞台の制作者が原作者としての表記を求められるのだったら原作者として表示して舞台の制作者にそれ相応の敬意を表されたらいいのではないか、と考える組の方だ。

既存の著作権の判例を引用して、単なるアイデアには著作権がない、翻案は自由だ、などと仰る方がおられるが、それではちょっと舞台の制作者が気の毒である。

著作権の範疇ではちょっと解決し難い問題になるようだが、舞台の制作者と映画化して莫大な利益を収受した映画制作者との間の利害をほどよく調整するような仕組みを作る必要がありそうだな、というのが私の感想である。

こういう問題は、基本的には当事者の直接の話し合いで解決されるのがいい。
話し合いが紛糾してどうしても訴訟手続きが必要になる場合もあるだろうが、まずはよく話し合って円満解決を目指されることである。

え、何の話?
カメラを止めるな!という最近評判の映画の話である。

私は、この映画の元となった「GHOST IN THE BOX」という舞台の制作関係者の方々を応援したい。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。