もうすぐ子ども達の夏休みが終わります。不登校の子ども達にとって夏休み明けは学校復帰のチャンスと言われることがあります。新学期が始まるタイミングで学校に戻ってきてはどうかと。今まで10年以上不登校と関わってきた私の経験から不登校の保護者や本人に向けてこのことについて書きたいと思います。
これは夏休みに限りませんが、確かに休み明けをきっかけに不登校だった子ども達が学校に戻ってくるということは多くありました。同時に夏休み明けは最も不登校になる子どもが多い時でもあります。どうすれば夏休み明けというチャンスを活かせるのか。子どもの不登校で困っている保護者の方々は気になることでしょう。
このことで私が最も大事だと思うことは学校に戻るという成功をいかに掴むかではありません。大事なのは、学校に行けなかったという失敗をいかにうまくするかなのです。なぜか。それは不登校が長期戦だからです。一喜一憂していたらすぐに疲れてしまいます。短期的には良かったと思えても長期的にはどうかは分かりません。不登校とは、色んなことの積み重ねで少しずついい方向に進んでいき、あるタイミングで急に前進するようなものなのです。
ですから、失敗しても大きなダメージにならず、無理のない範囲でチャレンジできることが大事になります。ここの見極めは大事です。保護者や先生方は子どもがキツイかもと思えば控えた方がいいでしょう。本人も保護者も無理をしないことが何より大事になります(詳しくは『不登校を考える なぜ九十年代に不登校が急増したのか』という電子書籍にまとめています。ぜひそちらもご覧ください)。
さらにもう一点、広い視野から考えてみます。上記まで私は学校に戻ることを成功、それがうまくいかなければ失敗という意味で書いてきました。しかし、それは本当でしょうか? ひょっとしたら学校復帰という成功よりももっと有意義な不登校という失敗(?)もあるかもしれません。いえ、その可能性は充分にあります。もはやそれは失敗とはいえないでしょう。
昨今、不登校を学校に戻すという方向性から学校に行かないという選択肢もありえるという方向に教育界も変わりつつあります。不登校の状態にあって本当に大事なのは学校との距離よりも心身がいい状態でいられるかどうかです。学校に行けるかどうかよりも、本人、家庭がゆったりとした心持ちで日々を過ごせられることの方が大事なのです。
しかし、それはなかなか難しいことであり、その理由は当事者の問題というよりは学校以外の選択肢の乏しさや社会保障の脆弱さなど、社会全体の問題であると私は考えます。
勝沼 悠 専門健康心理士
桜美林大学大学院修了後、15年に渡りスクールカウンセラー、教育相談員など、教育現場や医療現場で心理職として働いています。