人物を涵養する

BUSINESS INSIDER JAPANに今月5日、「40歳になって後悔しないために…… 20代で始めておくべき17のこと」という記事がありました。そこには「今日から始められる、今後の人生を変えるかもしれないアドバイス」として、「リスクを取れ」「まずはやってみる」「弱みを強みに」「自分を許そう」「友情を築こう」等々17の事が挙げられています。

あれをしろ・これをしろ、と様々書かれているわけですが、人は十人十色。夫々が全く違う中で個別具体的に何々をしろ、という話では必ずしもないと思います。私の当該テーマに対する結論を述べるならば、江戸時代の名高い儒学者・佐藤一斎の「三学戒」に書かれている通りだと思います。即ち、「少(わか)くして学べば壮にして為すあり。壮にして学べば老いて衰えず。老いて学べば死して朽ちず」ということです。

之は、「人は、幼少の頃に学ぶ楽しさが身につけば、大人になった時、社会の役に立つ人物となる。壮年期(30歳過ぎ)で学ぶ意欲が心の底から湧き出せば、中高年と言われる年代になって日々の人生が充実し、周囲を明るくできるものだ。老年期(70代過ぎ)で学ぶ人は、今までの人生経験に輝きが増し、朽ちたような死に方はしない。そして、後世の人々に大きな目標・理想の炎を燃やし続けさせる人物となる」といった意味です。

此の三学戒に表れているように、夫々の年代で云々でなく、兎に角若い時から人物を磨き続け高め行くための絶えざる努力をしなければならないのです。人間力をきちっと養うべく事上磨錬(じじょうまれん)し続けることが、ある意味全てだと思います。

我々は絶えず人間力を高めるべく、学んで行かねばなりません。最初から人間力が何であるかと分かった上で、学び始めることは有り得ません。学びを深めて行く過程で、人間力は何かと、気付いて行くものです。そして更には人間力を高めるに学びだけでは不十分であり、日々の実践を要すると気付いてくるのです。

『論語』の「泰伯(たいはく)第八の七」に曾子(そうし)の、「士は以て弘毅(こうき)ならざるべからず。任重くして道遠し。仁以て己が任と為す。亦(また)重からずや。死して後已(や)む、亦遠からずや」があります。

曾子は、「学徒たる者は度量があって、意志が強く、毅然としていなくてはならず、責任重大で道は遠い。仁道を推し進めるのが自らの責務であり、この任務は重大である。死んで初めて終わるとは、何と道程は遠いことではないか!」と言っています。

人道を極め多くの人を感化し此の社会をより良くして行くべく、終生努力して行く姿勢を持ち続けるのです。そして「行年六十にして六十化す」(荘子)ではないですが、何歳になろうが常に変身し自らを知行合一的に向上させて行くということではないでしょうか。

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