「帰国子女=英語力上級者」ではありません!

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

「帰国子女は発音がきれいで流暢な英語を話す“英語の達人”」と思っていないでしょうか?私も昔はそう思っていました。肩をすくめて「I don’t know」って言われるとカッコいい!と感じていたものです。

しかし、帰国子女といってもその英語運用レベルは天地ほどの差があります。働きながら日本国内でコツコツと英文を読み、学習に励んでいる日本人英語学習者に勇気が出るお話をしたいと思います。

日本人でも日本語能力は千差万別

「日本人は完璧な日本語を話す」、誰もがそう思っています。確かにそれは間違いではありません。しかし、こと「日本語運用能力」になるとどうでしょうか?普段から活字をたくさん読み、たくさん文章を書くことに慣れている人と、まったくそうしたことをやっていない人とでは天と地ほどの語彙力、表現力、文章力、理解力、読解力に差がついているはずです。

日本人同士でも日本語運用能力には大きな差があり、レベルが違いすぎるとコミュニケーションが大変困難になります。それは英語という言語であっても全く同じなのです。

「スゲー!」しか言えない帰国子女

私の知人に帰国子女の人がいます。発音はものすごく上手、インターナショナルパーティーへ行き、そこで出来た友達と酒を飲みながらワイワイ英語で話しています。パッと見、英語学習者が憧れの眼差しを送りたくなるような人に思えます。

彼はアメリカで育ち友達との英会話はそれこそ何万回とこなしているので、「How’s it going?(調子はどう?)」と聞かれると、「Alright.(いいよ)」ときれいな発音で返す事ができるのです。正直、私も英語の発音には自信がありますが、彼の発音にはかないません。やっぱり帰国子女、現地で10数年生活している人はさすが上手です。

しかし、私は彼と話をしていて、問題に気づきました。簡単な会話は卒なくこなせるのですが、なんだか会話はものすごく浅く感じるのです。30歳を超えている彼と話をしていても、まるでティーンネイジャー(10代)の若者のようなのです。

「○○についてどう思う?」→「I don’t know(ワカンネー)」

「最近のニュースではこういうことが問題になっていて…」→「Wow?Are you serious!(マジ?すげえ!)」

と感情的な表現は返ってくるのですが、そこから会話の発展は一切ありません。

アメリカの大学や企業では自分の考えを相手に伝える力がものすごく必要です。これはあなたも聞いたことがあるかもしれませんね。実際、私もアメリカで生活をしてそれはすごく感じました。

大学の授業でも「あなたはどう思うか?」「なぜそのように考えるのか?」と聞かれます。プレゼンやディスカッション、レポートという色んな形態で自分の意見を伝える必要があります。これが出来なければ、どれだけ日常会話をポンポンこなせてもぶっちゃけまったく役に立ちません。アメリカの大学や外資系企業で生き延びるには、このスキルが絶対的に必要なのですが、彼からはそれがまるで感じられなかったのです。

「Oh! Great!!(すごい!)」

「Fucking good(まじでスゲェ)」

返ってくる返答がこうしたものばかりだと、英語を使って大学や企業で勉学やビジネスは出来ません。否、日常生活を送る上でもあまり相手にされることはないのです。彼は30歳を超えても尚アルバイトしか経験がありません。友達との英会話が上手でも、それは英語上級者とは呼ぶことが出来ないのです。

デキるビジネスパーソンこそ読む力がある

先ほど例に上げた帰国子女の彼はほとんど本を読んで来なかったと言います。英会話の内容がティーンネイジャーの若者レベルから、まったく発展していない、その理由は「英文の読解をまったくしていないから」という理由は間違いではないと思います。考えてみればこれは不思議なことでも何でもないのです。

日本人で仕事でバリバリ活躍する一流のビジネスマンたちを見て下さい。彼らの中でたった一人でもいいので、「日常的に活字を読まない」という人がいるでしょうか?

あなたの周りを見て下さい。「あの人は仕事出来過ぎ!すごい!」とか「とっても知的で教養があり、話題が豊富で話がとても楽しい」と思う人が活字をまったく読まない生活を送っているでしょうか?答えはNOですよね?当然です。知的な会話、仕事をバリバリこなすノウハウ、こうしたものは母国語・外国語に関わらず、大量の読解に支えられているからです。

語彙力は大量の読解から養われます。微細な違いやニュアンス、誤解のないコミュニケーションは豊富な語彙力が助けてくれるのです。例えば色を伝える上でも語彙力はものすごく役に立ちます。「赤」と言うのと「ワインレッド」と言うのとでは伝わる情報の細かさが異なります。また、自分の意思を正確に、スムーズに伝える力もありますから、同じ人にお願いをする時にも

「これをやっておいてくれ」

というと言われた相手はムカッと来ることがありますが、

「これを早めに済ませることで後々、業務が楽に進みますよ」

という方が気持ちよく受け入れられやすくなりますよね?なぜかというと、後者の言い方は相手に取り組むメリットを伝え、押し付けがましくないからです。ビジネスの達人とは、こうしたコミュニケーション能力の達人でもあり、それは大量の活字を読解する事に支えられているのです。翻って、まったく活字を読まない人たちは話題や語彙が読む人に比べて劣ってしまいます。それが仕事や学業にも出てしまうわけです。

母国語でも大量の読解が知性の根幹になっていることは疑いようもない事実、外国語であれば尚更です。私の知っている範囲に限定した話でも、英語で知的な会話を楽しめる人、ビジネスで重役に付いている人、翻訳家などはみんな英語を大量に読んでいます。新聞もそうですし、ビジネスなどの専門書や学習本、そしてWeb記事などを含めて日常的に読書を楽しんでいるのです。

帰国子女だからといって、彼らが例外なく英語運用能力が高いか?というとその答えはNOです。日本語だろうと、英語だろうとたくさん文章を読み書きをすることで知性を磨いている人こそが、真の英語上級者と言えるのです。新刊『中学レベルの僕が「読むだけ勉強法」で英語をペラペラ話せるようになった! 』ではそんな「読むだけで英語力が向上する学習法」をご紹介しています。ぜひ一度手にとってお読み頂けると幸甚です。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。