安楽死の制度化を提案する③安楽死強要対策&まとめ --- 村川 浩志

寄稿

>>>「①長寿より幸福の追求を」はこちら

>>>「②社会保障抑制分の還付契」はこちら

安楽死制度に反対する側の意見として、「望んでない人や弱者が無理やり安楽死させられる可能性がある」というものがある。特に、還付金がもらえるとなると、例えば、借金取りなどが「安楽死契約で借金を返せ」と、しつこく要求することも考えられる。その対策の一つが「安楽死不可能化書面」である。この書面を一度提出したら、たとえ本人であっても変更は不可能となる。安楽死予備登録は有効にしておいて、安楽死契約だけ不可能化することもできる。不可能化していれば借金取りもどうしようもない。

もう一つの対策として、安楽死強要罪を制定する。他人に安楽死を強要した人物は、還付金を受ける権利を喪失、および、自分がもらった還付金の返還義務、および、介護期間に入ったら安楽死する義務が生じる。これによって国は財政的に恩恵を受けるわけなので、その利益の一部は告発者に還元する。これによって安楽死を他人に強要するリスクは極めて高いものとなる。

子育ての期間に月5万でも収入が増えたら非常に大きい。その上、老後資金の心配も小さくなるし、加えて、人手不足などの労働環境や景気が改善したら、生活が相当良くなることは間違いない。また、自分の介護で子供に大きな負担を掛ける心配もなくなるし、子供は親の介護をしなくて済むようになれば本当に楽になる。これこそが「尊い命を大切にする」ということではないだろうか?「せっかくの人生を有効に使う」という表現のほうが合っているかもしれない。

国際競争力も高まるだろうし、日経平均も急騰してGPIFの利益も拡大するだろう。景気が良くなれば財政はさらに改善する。その上で老人ホームなど介護関連の需要が大幅に減少すれば、お金や労働力が保育所や教育財源など社会が必要としているところに回ってくる。

医師不足、介護人材不足など医療・介護現場の疲弊が解消されれば、安楽死ではなく医療・介護による長寿化を選択する高齢者にも今より質の高いサービスが可能となる。あるいは、以前、後期高齢者医療制度が「姥捨て山制度」と批判されたが、多くなり過ぎている高齢者が正常な数に近づけば、そのような「現代版の姥捨て山」と言われるような様々な事案や政策もなくなっていく。政府は市民のニーズに対して経済的合理性を持った選択肢を用意し、そして市民一人一人が主体的に自分にとっての幸福を選択していく、それがこの介護期間自己決定制度の主眼である。

結局のところ、少子高齢化によって逼迫している財政や社会の諸問題を解決するには、寿命を短くする、安楽死する人を増やす、つまり、安楽死する人がもらうべきお金を生前にきちんと受け取れる仕組みを作るということが最も有効だろうと私は考える。いずれにせよ、社会保障制度を持続可能な形にする改革が求められていることは間違いない。その制度設計にあたっては、「経済」と「道徳」を両立させる必要がある。つまり、国民が倫理的に許容できる範囲内で、幸福につながる合理性を追求しなければならない。

これには広範で活発な議論が必須のところだが、残念ながら、日本の政界や大手メディアは安楽死という問題に非常に及び腰だ。しかし、これから団塊の世代が介護期間に入っていくことを考えると、もっとオープンな議論を始めなければならないときが来ているのではないだろうか。(完)

村川 浩志(むらかわ ひろし)ライター
大学卒業後、出版関連会社に勤務し、執筆・編集業務に携わる。政治、社会保障の分野に関心を持ち、執筆活動を行う。