野口悠紀雄氏『超独学法』にみる“天才の条件”

黒坂 岳央

こんにちは!黒坂岳央(くろさか たけを)です。
野口悠紀雄さんは著書「超独学法」で次のように提唱されています。

「教育機関での座学より、独学が優れている点がある」

「独学で力をつける重要性はAI時代の今こそ高まっている」

「能力獲得は学歴獲得より重要である」

「英語は独学でしか学ぶことができない」

本書を読解する中で、私は「独学の天才である、ということは天才の必須条件」と感じました。

座学教育からはイノベーションは生まれない

大きな変化が起これば、これまで誰も手をつけていない世界が広がる。そこで新しい事業を起こすには、独学で身につけたノウハウで手探りで進むしかない。

と野口さんは言われています。座学に寄る高等教育機関といえば大学ですが、大学は先端の知識や情報が得られるわけではありません。変化の早いITの分野においては、大学卒業時には陳腐化している例も珍しくないのです。

GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)という略称で世界を席巻するIT企業はダイナミックなアメリカ経済を象徴するハイテク企業で、次々と前例のない商品やサービスを生み出してきました。世界中の人たちのライフスタイルを一変する新しいビジネスやサービスは、常にトップビジネスマンの独学から生まれています。

先端の情報はWebに存在しており、インターネットにつながって世界に開かれています。GAFAの創立者と同じ発想力や情報を得ることで、理屈の上では他の人にも同じ事ができたチャンスが与えられていたといえます。もちろん、一部の人にしかアクセスできないインナーサークルで共有されている情報もあるのですが、一般人とこうした企業のイノベーターとの違いの本質的は「独学力」にあるといえるわけです。

変化が速く、前人未到の領域とはビジネスチャンスそのものです。そのチャンスをものにできるかどうかは、発想力、行動力に加えて常に先端の情報や知識を必要に応じて学習する「独学力」にこそあるのです。大学などの教育機関での、大勢が同じ方向を向き、同じ内容を受講するスタイルとはかなり異なります。座学教育からは、イノベーションは生まれないのです。

私が経営する肥後庵のマーケティングや、ジャーナリストとしてのビジネススタイルは、体系化されたカリキュラムに基づくものではありません。昔は、経営コンサルタントと契約して教わっていたこともありましたが、その時々で分からないことを調べ、色々と試して試行錯誤してきた結果です。

私が取り組んでいる「ネットショップビジネス広告費0円マーケティング」はWebのどこを探しても同じやり方をしている人はみつかりません。なぜなら、この取り組みは「独学」の結果として行き着いたものだからです。他の人がやっていないビジネスやマーケティングは独創性が備わることで価値が生まれるのです。

人間は学習によって能力の多くを獲得する

人間はオギャアと生まれた時は極めて原始的で、限定的な能力しか持っていません。お腹が空いたら泣いて両親の注意喚起をする程度です。それと比べると人間を除く動物のほとんどは生まれた時から能力のほとんどを持っています。

働きアリは脱皮して成長しても女王アリになることはできない

と言われており、ほとんどの動物の一生は生まれた時から固定されています。その反面、人間は生まれた後に能力や社会的地位のほとんどを後天的に獲得する、極めて特殊な動物なのです。

生まれた時から覆せない身分を持って生まれ、出身階級や学歴だけで一生のレールが固定されてしまう国がある一方で、日本は努力して教育やキャリアの研鑽を積んでいくことで自分で人生を作っていく極めて健全な社会です。日本に生まれたからこそ、独学で常に知性を磨いてく事が重要なのです。

これから人生100年時代になっていきますから、学生時代に学んだ事で一生食べていくことはますます難しくなっていきます。いまこそ、独学力の重要性が試されるのです。

歴史の偉人は独学の天才

歴史に名を起こす偉人は最高学部で最高峰の教育を受けた人たちではありません。

語学の天才、シュリーマンは18カ国語を独学で学びました。また、人類史上最高の天才と評され、現在のコンピュータの生みの親とも言われるフォン・ノイマンは本の丸暗記という独習です。アメリカのリンカーン大統領は独学で弁護士になり、生涯で正式な教育を受けた期間は1年にも満たないのです。

鉄鋼王カーネギー、ライプニッツ、ガリレオ・ガリレイ、ファラデー、そしてエジソンといった歴史を変えた偉大なる偉人はビジネス、自然科学、数学、発明家というあらゆる分野で独学により、世紀の発見を成し遂げ、大きな成功を収めています。

彼らが独習により、名を馳せることができた理由は2つです。1つ目は独学の学習効率の高さ、それから2つ目は発想が常識に歪められなかったということです。

独学は極めて学習効率が高いのです。必要のない部分は読み飛ばし、理解が弱い箇所や重要な部分を念入りに時間を投下できます。100%自分の理解度や能力にマッチした学習法であり、その学習における時間密度の濃厚さは、いかなる高度な教育機関でも提供できません。

そして教育機関で提供される内容は多くの人の手垢のついた「常識」です。すでに証明され、前人が足を踏み入れた領域について教わるわけですから、そこからは独創的な発想や常識はずれのアイデアはどうしても生まれにくくなります。

独学であれば、常識にとらわれず、自身の探究心の赴くままに世界を切り開いていけますから、偉人たちの情熱を持ってすれば前人未到の世界へ手をかけることになるというわけです。

天才は独学の結果からしか生まれません。どれだけ高度な教育を受けた人であっても、イノベーションはその後の独学の先によって生まれるものなのです。私が先日出版した「中学レベルの僕が「読むだけ勉強法」で英語をペラペラ話せるようになった!」という本にもその想いを込めています。

「座学のお勉強こそ、最高の学習法である」と信じている人が多い世間に「英語は独学で身につけることが出来るし、独学でしか身につかない」、という一石を投じる非常識な提案をしてみたつもりです。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。