最近、営業マンが中途入社してきた。彼の名前は鈴木という。しかし鈴木のレベルは期待する水準に達していなかった。そのためチェックを厳しくすることにした。私は彼を罵倒した。「数字はしっかり確認しろと言っただろう!」「コピー&ペーストは禁止だと何度言ったら分かるんだ!」と叱りつけた。周囲は心配したが一蹴した。
今日も、時計の針は深夜1時を回っている。私は自腹でタクシー代を手渡した。しかし、翌日以降、鈴木は出社しなかった。すべては鈴木のためを思ってやっていたことだ。しかも、自腹でタクシー代まで手渡している。なんだったんだあれは。
今日は、『部下に好かれる、嫌われる人は、ここが違う!「愛され上司」になる方法』(堀内一人著、実業之日本社)を紹介したい。上司にとってマネジメントは大きな課題。部下とのコミュニケーションを円滑にするには何が必要なのか。
職場の雑談は、「声かけ」が9割
「今、世の中は雑談流行りです。コミュニケーションという枠組みの中で、雑談が担う役割は大きいのだろうと思います。人と人の関係性をさらに円滑にする軽めのコミュニケーションなのでどこでもできるし、誰とでもできます。その日の出来事や天気などが話題になるから、心的負担も小さい。そういう意味では、組織の血液の流れを良くするような最高最良のサプリといえるのではないでしょうか。」(堀内さん)
「職場という人間関係がストレスになりやすい環境においては、雑談がいろんな場所で、いろんな立場の人間が交差していくと、ストレスは軽減されます。関係性もよくなり、業務上もプラスに働きます。私も、よく喫煙ルームで部下や同僚たちと何気ない雑談をすることにより日々のプレッシャーから解放されていました。」(同)
しかし、職場でどのように雑談をしたらいいのか分からない人も少なくない。上司が部下に対して雑談をするには部下が話しやすいテーマが必要になるからである。
「部下も下手なことは話せないという心理が働くので、雑談にならないことも多いのではないでしょうか。かなりぎこちない感じになり、それこそ、あっという間に会話が終息するようなパターンに陥ることも多々あります。職場での上司から部下への雑談は会話と捉えないことが重要です。『雑談=声かけ』と考えてください。」(堀内さん)
部下との関係は「声かけ」で近くなる
「初めから会話をしようと思うから、お互いにちょっとぎくしゃくしてしまうのです。そもそも何気ない感じのキャッチボールが売りの雑談なのに、それがなくなってしまったら意味がありません。声かけであれば、ぎくしゃくせずに、コミュニケーションが図れますし、雑談と同じような効果があるからです。」(堀内さん)
「声かけは、会話を前提にしないコミュニケーションの一種です。会話そのものの内容というよりも、声かけのシチュエーションや状況の方が大事ということになります。要するに、相手がどんな状態なのか?ということが一番のポイントとなります。その状態に応じて、気の利いた声かけをするから、相手は、思しもよらないところで声をかけてもらったおかげで、うれしくなったり、感謝したりするのです。」(同)
この「不意を衝かれた感」が、相手の感情を揺さぶり、大きな効果を生むと、堀内さんは解説する。さらに、声かけは会話を前提にした雑談よりも効果的であると。相手のとらえ方次第なのでタイミングが重要になるが、自然な声かけなら部下も萎縮しない。しかも声かけは費用がかからない。今日から実験的にためすのも悪くない。
尾藤克之
コラムニスト