最高裁の判例が出されているものであれば、国会議員の方々は間違いなく最高裁の判例に従うだろうし、少なくとも最高裁判例を蔑ろにすることはない。
それでは内閣法制局の見解については、どうか。
与党の国会議員の場合は、内閣法制局の見解を尊重するだろうが、しかし必ずしもこれに全面的に従うわけではない。
翻って、野党の国会議員の場合は如何か。
自分たちの主張に都合がいい場合は、内閣法制局の見解を金科玉条のように持ち出すだろうし、自分たちの主張に沿わない見解の場合はあえて内閣法制局の見解を持ち出すことはしない。
人によって差はあるだろうが、練達した国会議員は自分たちこそが法を作るlawmakerだという自負があるから、そう簡単には内閣法制局の見解には従わない。
そういうことを堂々と態度で表明したのは、今は立憲民主党の代表である枝野幸男氏である。
民主党時代に憲法の解釈についての答弁は一手に自分が引き受けると宣言して、内閣法制局長官に答弁させなかったことがあったように記憶している。
実は、自民党の中でも似たような議論があった。
憲法はじめ法の解釈は、立法府である国会を構成する国会議員が自ら責任を持って行うべきであり、内閣法制局はあくまで内閣を補佐する法律の専門家として参考意見を述べているだけだ、ぐらいの気概を示される方がおられた。
安倍総理が内閣法制局長官に外務省の条約局長の小松氏を登用したのは、自民党内のそういう気分を反映したものではなかったのかしら、と思っている。
国際政治学者の篠田さんが、国会議員はどうも学者の意見に耳を傾けていないようだ、という一文を書いておられたので、国会議員の立場から見ると憲法学者や国際政治学者の意見がどう見えるか、ということを、ご参考までにご紹介しておく。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年10月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。