戦闘機のローハイミックスの可能性

今月の月刊軍事研究で文谷数重氏が空自の戦闘機はローハイミックス(※)にすればいいという記事をかいております。
(※ 編集部註:ローハイミックスは価格の高い兵器と低い兵器を最適に組み合わせること)
これについては同業者でも意見が別れているようです。

ジャパン・ミリタリー・レビュー
2018-10-10

ぼくは基本的に文谷氏の主張を支持します。流石に###を採用しろとはいいませんが、これも文谷氏、一流の当てこすりでしょう。わかりやすくインパクトのある例を出すほうが理解ができるというところで出したのではないでしょうか。

F35戦闘機(空自サイトより:編集部)

ようはカネの問題です。
例えば今の定数の戦闘機にしてもF-35を採用するにしても国内調達をやめないとならないでしょう。
そしてF-35だけで戦闘機を構成する訳にはいかない。

客観的に見れば国内開発は無理。高くてクズしか作れない。F-2みればよく分かるでしょう。C-2だってお値段は当初の二倍。C-17が買えるお値段です。

そもそも戦闘機をまともに開発するノウハウもない。テクノナショナリズムに毒されている人たちはその現実をみようしとない。8輪装甲車でもそうですが、官の側に当事者能力が欠如しています。

しかもF-2の生産が終わって撤退したベンダーも少なくありません。

共同開発も楽な道ではありません。
我が国はろくに開発費や試験費用を出しませんが他国は違います。国内開発の数倍のR&D費用はかかるでしょう。であればR&Dの費用は対して安くならないでしょう。

また船頭多くして船山に登るということもあるので、時間もかかるでしょう。何しろまともに共同開発したこともありませんから。どこと組もうとやり取りは英語になります。文書つくるだけでも大変な労力です。
果たしてそれに見合う成果があるのか。英国と組むとしてもベンダーに近い形で参加するほうがよろしいかと思います。

F-22、F-35ベースの機体なんぞも胡乱な話です。コストは1機あたり200~400億円にはなるんじゃないでしょうかね。

ぼくはF-35を後1~3個飛行隊を輸入で調達すべきだとは思います。一部はB型にしてもいいでしょう。
これを主として西方に展開する。
あとはF-15Jを更に近代化して騙しまし使う。航続距離と兵装搭載量は魅力です。

後は安価な50億円以下ぐらいの戦闘機で済ませる。
これも正直申せば、過去の経緯を見る限り自主開発する安価にには済まない可能性が高いでしょう。
開発するのであれば練習機と兼ねて開発して機数を稼ぎ、またベンダーとし参加する国を募って、機数を増やす。

また調達数、機数、いつまでに調達して、予算はいくらになるかを明らかにすべきです。
ですが、それができないのが市ヶ谷の住人たちです。

既存の外国製の機体をちょっといじるぐらいにした方がよろしいでしょう。

それらにアラート任務などを任せる。

またいつも申し上げておりますが、機数を減らして稼働率を上げ、パイロットを増やす手もあります。
パイロットを増やして常に全力出動できる体制をとる。
そのほうが実質的に機数を増やすのと同じ効果があるでしょう。

これもご案内済みですが、空自の戦闘機は制空に特化して対艦任務は放棄する。
そうすれば戦闘機にかかる費用や、対艦攻撃の訓練もオミットできます。
対地攻撃も同じ。どうせ端からやるきもないわけで、やるふりをするだけ無駄です。

制空にしても戦闘機だけが必要なわけではなく、AWACS、AEW、電子戦機、その他ISRのアセット、空中給油機ももっと必要です。更には基地の抗堪性を上げる必要もある。これらの予算だって降って湧くわけじゃありません。

使える予算内の範囲で最適な解を出す必要があります。

無論全部高い戦闘機にするにしても数を抑えて、乗員を3倍にするとかの方策も考えられるでしょう。

戦闘機をすべて一線の高い機体で揃えればそれは楽しいでしょうが、無い袖は触れません。
予算の範囲内で、何をなすか、その優先順位を考えるべきです。

また陸自の予算をバッサリ切って、空自に回すことも考えるべきです。ただ漫然と高いC-2を調達するような無駄使いなどの「悪癖」も直すべきです。これは当事者には泥棒に縄をなえという話になるので、外部から矯正しないといけないでしょう。

■本日の市ヶ谷の噂■
総務省が30億円もかけてNECに開発された軽航空機搭載用の「超小型」SAR(合成開口レーダー)は重さ100キロと巨大で完全な失敗作。使い道がないので一つは首都大学、もう一つは防衛省のヘリに搭載して実験させるも使い道がなく、評価は昨年で終わり、お蔵入り。だがNECと総務省は大成功と自画自賛との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年10月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。