妻が区議を目指し始めてパニクったことについて

駒崎 弘樹

先日、妻から相談されて、息が止まりそうになりました。いや、実際数秒止まってたと思います。

「区議になって、この町の課題を解決したい」

そんなこと、洗濯物畳んでる時に言われても。

確かに僕は妻が行政ウーマンとして長年勤めていた市役所で、なかなか本当に地域のためになる活動ができないと悩んでいた時に、「好きに生きたら良いよ」と言ってました。

仕事を辞めて地域活動に打ち込みたい、と言われた時も、「一度きりの人生だしね」と応援しました。

妻は僕と違って社交的で、地域に友達もたくさんいて、「学童を増やして」っていう署名も集めまくって、実際に議会に動いてもらって、学童を増やす後押しになったりしていました。

世の中的には少しだけ名前を知られている僕ですが、地元では「みっきー(妻)の旦那さん」という存在です。

そんな活動的で社会派の妻が、地域の課題に色々とぶつかって悩んでいたことは何と無く感じていましたが、まさかいきなりそんなことを言い出すとは。

「俺が起業家でリスクとった人生を歩み、君が公務員で安定してるからちょうど良いね、ってそういう話だったじゃん」

「4年に1回失業するかもしれない職業って、リスク高すぎじゃない?(まあ、僕は来月失業する可能性もある起業家だけど、それは置いておいて)」

「2世で親の地盤があるわけでもないし、お金もないし、それで地方議員になれたりするの?」

などなど、思わず口走ってしまったのでした。

しかし、ひととおりダメ出しをし終わった時に気づいたのです。

「あ、俺は俺の信念に矛盾することを、いま言っている」と。

僕が病児保育で社会起業しようとした時に、めっちゃダメ出しされました。男なのに。子どももいないのに。医者でもないのに、って。無謀だ、リスクが高すぎるって。

僕はそういうこと言ってくる人たちが本当に嫌で。何もなきゃ起業しちゃダメなのかよ、と。

でも今、自分が妻に同じこと言ってるじゃん、という。

そして今までの人生で、女性が(男性も)子育てしながら、何でも挑戦できる社会をつくろう、ってやって来たし、叫んで来たわけで。

女性だから、母親だからって何かを諦めることが無いように。保育園や病児保育や障害児保育があれば、可能性を最大限に伸ばせるんだ、って言って来た自分が、今、妻の可能性の芽を摘もうとしている。

ダメじゃん、自分。

それがどんなに傍から見たら無謀な挑戦に見えようと、共感と敬意によって受け止める態度こそ、自らが社会に求め続けて来た姿勢ではなかったか。

そんなわけで、妻の一番の応援団になろう。そう決めたのでした。

と言ってもできることは、家事と育児を今以上にやることとか、妻の話を聞いたりすることくらいですが、それでも頑張りたいと思っています。

北区ローカルな話で、僕の友人・知人の皆さんの大半には関係のない話かもしれませんが、ここで皆さんにお伝えいたしました。

こまざき美紀公式サイト


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年10月13日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。