韓国の文在寅大統領と安倍首相がいずれも訪欧中である。もともと、安倍訪欧は7月のEPA調印とフランス革命記念日出席にあわせて行う予定だったが、首相が外交で点数を稼ぐことを防ぎたい野党に邪魔されて延期されていたものだ。
その結果、文在寅大統領のあとを追っかけるような形になった。そこで、元レバノン大使の天木さんは、次のように「期待」を書いていた。
マクロン大統領に、「少なくとも北朝鮮の非核化が後戻りできない段階に来たとの判断が立てば、国連制裁の緩和を通じて非核化を更に促進すべきだ」と安保理の常任理事国としての役割を果たすよう求めたというのだ。
その後にマクロン大統領と会談する安倍首相は、例によって北朝鮮の非核化に向けて制裁を緩めてはいけないと要請するに違いない。
文在寅大統領と安倍首相の相次ぐ異なる要請に、マクロン大統領がどう答えるかは、もちろんマクロン大統領の判断だ。
しかし、金正恩委員長と直接会って得た極秘情報を携えて首脳会談に臨んだ文在寅大統領の首脳外交と、何の情報も持たずにひたすら拉致問題の解決と北朝鮮への制裁を緩めるなと繰り返すだけの安倍首相の地球儀外交のどちらに、マクロン大統領が聞く耳を持つかは明らかだ。文字通り安倍地球儀俯瞰外交は、文在寅大統領の南北融和の懸命の首脳外交に先を越されたのである。
(出典「欧州訪問で文在寅大統領に先を越された安倍首相」)
しかし、結果、どうなったかといえば、「朝鮮日報」の社説はこう伝えている。
マクロン大統領は「実質的な非核化が実現するまで、北朝鮮に対する制裁は続けていかねばならない」と反論した。制裁緩和を拒否する意向を明確にしたのだ。
韓仏首脳会談後の共同宣言には冒頭「韓半島(朝鮮半島)非核化はCVID(完全かつ検証可能で不可逆的)方式で進めねばならない」との文言が入った。CVIDは北朝鮮が極度に嫌う表現であるため、米国でさえあまりこの言葉は使わない。おそらくマクロン大統領が強く主張したので宣言文に入ったのだろう。
さらに、左派系のハンギョレ新聞は「安倍首相、マクロン仏大統領と会談「フランスは太平洋国家…力を合わせたい」という題した記事で、こう報じた。
安倍首相とマクロン大統領は、北朝鮮の非核化と日本人拉致問題の解決に向けて国連安保理の対北朝鮮制裁を完全に履行することが必要だということにも意見が一致したと、日本の外務省が明らかにした。
さらにこの記事では、「自衛隊と仏軍による合同軍事演習の拡大に合意」「国連安保理の北朝鮮制裁の履行にも意見一致」というサブタイトルがあるように次のことを伝えている。
(日仏両首脳は)両国間の安保協力を強化することで合意した。日本は南太平洋のニューカレドニアに軍事基地を保有しているフランスとの軍事協力を強化し、中国の海洋進出を牽制する動きを見せている。
安倍首相は首脳会談後、パリのエリゼ宮殿で行われた共同記者会見で「日本とフランスは同じ太平洋国家だ。自由で開かれたインド太平洋の発展と繁栄に向け、力を合わせたい」と述べた。フランスがニューカレドニアやフランス領ポリネシアなど、南太平洋の一部の島々に対して領有権を持っている点を意識した発言だ。マクロン大統領も「インド太平洋の均衡と安定は(国際社会の)課題」だと応えた。
両首脳は、日本の自衛隊とフランス軍の合同軍事演習の拡大にも合意した。日本の海上自衛隊の艦艇は今年2月、関東付近の海でフランス艦艇と演習を行った。自衛隊とフランス軍だけが行った初の合同演習だった。日本とフランスは今年7月、相互軍需支援協定(ACSA)を締結した。日本は最近、フランスだけでなく、自衛隊と外国軍との共同合同演習を拡大している。陸上自衛隊は先月30日から今月12日まで、静岡県と山梨県、宮城県で英国陸軍と合同演習を実施した。陸上自衛隊が日本領土で同盟国である米国軍のほか他国の軍隊とともに訓練した初めての事例だ。
日本の新聞はこういう重大事はほとんど報道しないが、これを苦々しく感じている韓国の左派系新聞がちゃんと報道してくれるのでわれわれは事実を知ることができるという皮肉だ。
さらに、朝日新聞によると、韓英首脳会談ではこうなったそうだ。
(韓国大統領は)北朝鮮が非核化を進展させる場合に人道的支援や制裁の緩和が必要だ」と述べ、国連安全保障理事会で議論するよう求めた。
これに対し、メイ氏は「北朝鮮の非核化プロセスをさらに促進するための議論は必要だ」と応じたが、「北朝鮮もCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)に対する具体的な行動が必要だ」と主張。北朝鮮の現在の措置だけでは不十分との認識を示したという。
さらに、朝鮮日報の伝えるところによれば、以下の通りだ。
韓国大統領府と与党は19日、ローマ法王の訪朝を既成事実化する発言を相次いでした。しかし、ローマ法王フランシスコは文在寅(ムン・ジェイン)大統領が伝えた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の「平壌招待」提案に、英語で「available」(可能な、時間の都合が付く)という意味に当たる原則的な回答をしていたことが分かった。この表現をめぐり、「事実上、訪朝を承諾したもの」と解釈した大統領府の説明は、実際の法王の意向とは違いがあるのではないかとの指摘も出ている。
いまさら驚くほどでもないが、日本の偽リベラル系マスコミは、韓国の左派系新聞より、安倍政権に都合が良いことは報道せず、文在寅大統領の希望的観測やデタラメな公式見解は報道するが、都合が悪いことは報道しない。
報道の自由とかフェイクニュースの弊害とかよくいうと思う。