日本の大学の積極的な資産運用は「ここが問題」

内藤 忍

国内の私立大学が、資産運用に本腰を入れ始めたと昨日の日本経済新聞が報じています(図も同紙から)。

図のように、私立大学の余剰資金の運用は、9割以上が現預金と債券です。低金利が継続する中で、このようなポートフォリオでは運用益はほとんど得られません。少子化が進み大学の学費からの収益も頭打ちになっています。これからは資産運用によって奨学金や研究開発費用を捻出しなければ大学の経営基盤に影響が出てくるでしょう。

米国の大学の資産運用のデータも掲載されていましたが、現金と債券は10%程度。代替資産(オルタナティブ投資)が50%以上となっています。

日本の大学も米国の大学を真似て、株や債券以外の代替資産へのシフトの動きが見られます。

しかし、金融資産にはマーケット「歪み」はほとんど存在しません。代替投資の代表であるヘッジファンドの中には、インデックスに比べ高い運用成果を出すものもあります。しかし、ヘッジファンド全体の平均リターンは、株式のインデックスリターンを下回っているというデータもあります。金融資産を組み入れた代替資産だけで高いリターンを稼ぎ出そうというのは難しいと私は思います。

Wikipediaより:編集部

実際、過去に金融派生商品と呼ばれるデリバティブ投資で資産運用に失敗する私立大学もありました。駒沢大学がデリバティブ取引で154億円の損失を計上したことがありました。慶応大学も積極的な資産運用が裏目に出て資産運用で収益ではなく逆に損失を出したりしています。積極的な投資をすればうまくいくという訳ではないのです。

資産運用の知識がない大学の事務局が、いきなり投資を始めても、結局は金融機関の言いなり。高コストの金融商品を充分リスクを認識しないまま買わされる。その結果、コストばかりかかってリターンが出ないという結果に陥ってしまうのです。

大学の資産運用には、金融商品による代替運用ではなく不動産が向いています。不動産には、株式のようにマーケット環境にあまり左右されず、賃貸収入が安定しているメリットがあります。実際、新聞社やテレビ局のようなメディアは本業の傍ら、不動産業に力を入れ本業の収益低下を補っています。

私立大学の資産運用こそ、ヘッジファンドや株式といった値上がり益を狙う投資ではなく、不動産のようなインカムゲイン型の投資を取り入れるべきです。

資産運用のベストな方法は、金融資産と実物資産を組み合わせたハイブリット投資。大学の財務担当者の方も、是非私のセミナー(31日23時59分59秒まで無料視聴可能です)を見てください(笑)。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

 

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。