11月1日のICPFでは医療系スタートアップ企業を取り上げた。登壇いただいたヘルスビット株式会社は2017年創業と、生まれてまだ一年しかたっていない。この会社には、身体年齢を簡易計測するパーソナルスコアや、診療所の事務作業を自動化するソフトウェアロボット(ヘルスロボ)といった商品がある。
身長、体重、腹囲、握力、閉眼片足立ち時間から身体年齢を求めるのがパーソナルスコアである。身体年齢が若ければ確定拠出年金の掛け金を増額するというインセンティブをある会社が付けたところ、半年で多くの社員の身体年齢が若返った「健康経営」の事例が紹介された。社員の健康は休業率を下げるだけでなく業務効率を上げる効果があり、掛け金増額負担は経営的にペイする。
政府は『健康・医療戦略』を策定し、その中では疾病予防・健康管理サービスの創出が謳われている。健康増進によって医療費総額を抑制するわけだが、このシナリオを経済産業省が図面化した。青年期から生活習慣の改善や早期受診を勧奨し、予防と早期治療によって医療費総額を抑制するという。
この図を見ると疑問がわく。早期治療はともかく、生活習慣改善に公費をどのように支出するのだろうか、支出されているのだろか。
医療サービスを受けると、平均的に言えば、その費用の38.6%は公費が、49.1%は保険者が負担し、患者負担は11.5%に過ぎない。一方、健康増進の費用は、身体年齢を自覚させて生活改善に向けた行動変容を仕掛けるパーソナルスコアだけでなく、トレーニングジムや健康食品も含めてすべて本人負担である。これではインセンティブが働きにくい。経済産業省の図面は健康増進も公費で負担するようにも読み取れるが、そのような施策は地方公共団体を含めて限られている。
医療よりも健康が重要という認識はできたが、健康に対する公費の投入は少ない現状を打ち破る政策議論が求められる。
なお、セミナーの記録はICPFサイトで後日公開します。