韓国との歴史問題を抜本的に解決する方策

鈴木 衛士

最近、また韓国の反日活動が活発になりつつある。10月30日には日本統治時代の徴用工問題で韓国最高裁が賠償を認める判決を出した。韓国において司法権は分離されているとはいえ、現政権の息のかかった最高裁判事による判決であり、現政権や民意を反映しての判決であったことは否めないであろう。

最高裁勝訴に沸く元徴用工の原告側(KBSより:編集部)

これにさかのぼる10月上旬には、韓国で行われた国際観艦式への参加予定であった海上自衛隊の艦隊旗を旧日本軍の旭日旗と同一視してその掲揚に注文を付けた。今までならばスポーツ競技場などでサポーターが使用する場面でしか問題にならなかった旭日旗に関して、公式な式典で国家の代表として参加する海上自衛隊の旗にまで拡大して難癖をつけた韓国政府は、ことさらに反日に固執しているとしか思えない。

ましてや今回の場面では、特に日本側が韓国を刺激するような行いをした経緯もなく、むしろわが国は米韓と協調する姿勢を明確にしている状況にある。にもかかわらず、このような反日的な態度を示すのはどうしてなのだろう。そう疑問に思う日本人が多いのではないか。しかし、私はこれには明らかな理由があると考えている。

今回の一連の韓国による反日姿勢の主たる要因は、現在の南北関係にある。即ち、韓国は北朝鮮との関係が改善の方向に進むと反日傾向が強まるということである。卑近な例でいうと、オリンピックなど国際的なスポーツ競技で南北合同チームが結成されると、その競技において韓国の日本に対する敵意はむき出しになる。

なぜならば、同一民族でありながら敵対関係にある分断国家が結束するためには共通の敵を作るのが何より効果的であり、朝鮮半島を併合した当事国である日本はその格好の標的となるからである。

北朝鮮に関していうと、現在わが国の大多数の国民は北朝鮮に対して、「拉致問題」と昨年までの度重なる「ミサイル発射」により、北朝鮮に対して「悪」の国家というイメージを抱いている。一方の北朝鮮にしてみると、日本は自国に対する圧力外交(制裁)の急先鋒であり、米国や韓国のように対話を通じた交渉相手にもなり得ていない存在である。

つまり、北朝鮮を敵視する姿勢を崩さない日本を孤立させるために、南北が結束して反日ムードを醸成することは北朝鮮にとって好ましいことであり、韓国はこれを忖度して『反日姿勢を示すことで民族団結を強調して北朝鮮に取り入ろうとしている』側面があるということである。

この傾向は、今後ますます顕著になることが予想される。その理由は、現在米朝は対話協調路線に向かっており、今後米朝協議が進展すれば北朝鮮は、この協議を優位に進めるべく韓国との関係改善をますます誇示するであろうし、親北政策を進める韓国の文政権も北朝鮮を擁護するためにこれに同調するに違いないからである。

わが国としては、韓国の反日姿勢がこれ以上顕著になり、国内で嫌韓ムードが高まるのはあまり好ましいことではない。なぜなら、米朝協議が順調に進展すればわが国に対しても必ず朝鮮半島(南北)への関与が求められ、この際に日米韓の結束を強めることが米国を助けることになるとともに、わが国への利益にもつながる結果になるからである。従って、韓国との関係をこれ以上悪化させることは国益を損なうと考えるべきである。

官邸サイトより:編集部

今後、韓国の反日姿勢を変化させるためにわが国が採るべき効果的な方策は、わが国が北朝鮮との関係を改善する方向に舵を切ることである。即ち、日朝首脳会談を早期に開催し、米国と同様に対話姿勢を鮮明にすれば、韓国は北朝鮮問題の主導権を握るべく、日米とより緊密に連携するためにわが国との関係改善に本腰を入れるであろう。

また、日韓の歴史問題に起因する反日姿勢は、日朝間の戦後補償問題にも悪影響を及ぼす可能性があることから、韓国政府は日朝間の協議の妨げとなる国内の反日活動を抑制しようとすることが期待できる。

実際のところ、韓国との歴史問題にけりをつける「鍵」は、日朝関係の抜本的な解決にこそあるのかも知れない。つまり、わが国がこの問題にいつまでも引きずられないためには、韓国を相手にするより北朝鮮に目を向けるべきではないか。

国内が一枚岩の北朝鮮と戦後補償問題を解決し、日朝間で「朝鮮半島における第二次大戦時の日本に関わる歴史的な諸問題は全て解決し終焉した」などと両国が宣言すれば、韓国がいずれまた問題を蒸し返しても、朝鮮半島の国家としての正統性を疑われる結果になるだけでなく、北朝鮮が建国以来の悲願であるところの「国土完整(北朝鮮主導による国家統一)」に近づくことになるという結果を生み出すことになるであろう。

鈴木 衛士(すずき えいじ)
1960年京都府京都市生まれ。83年に大学を卒業後、陸上自衛隊に2等陸士として入隊する。2年後に離隊するも85年に幹部候補生として航空自衛隊に再入隊。3等空尉に任官後は約30年にわたり情報幹部として航空自衛隊の各部隊や防衛省航空幕僚監部、防衛省情報本部などで勤務。防衛のみならず大規模災害や国際平和協力活動等に関わる情報の収集や分析にあたる。北朝鮮の弾道ミサイル発射事案や東日本大震災、自衛隊のイラク派遣など数々の重大事案において第一線で活躍。2015年に空将補で退官。著書に『北朝鮮は「悪」じゃない』(幻冬舎ルネッサンス)。