SBクリエイティブ株式会社から『これから仮想通貨の大躍進が始まる!』という本を上梓しました。7日より全国書店にて発売が開始されます。
今、金融の世界が大きく変わろうとしています。「仮想通貨」「ブロックチェーン」「フィンテック」――近年、このような新しいキーワードが続々と登場し、「キャッシュレス社会の到来」や「銀行の消滅」といったことが現実味を持って語られるようになっています。
もはや、現金以外の支払手段は、クレジットカードや電子マネーだけではありません。コンビニエンスストアでは、QRコードやスマートフォンを使ったもの等、様々な支払手段が次々と登場しています。振込や入金に加え、様々な金融商品への投資が手軽にスマートフォンで可能になる一方、銀行の支店やATMの減少が目立っています。金融業界に携わっている人だけではなく、一般の方々も金融の世界が変わりつつあることを肌で感じていることでしょう。
そして、もう1つ、本書を手に取って下さる皆さんが、気になっているものがあると思います。「仮想通貨」です。2017年、仮想通貨の代名詞である「ビットコイン」の価格が、1年間で20倍以上も上昇しました。ところが、同年12月下旬に、今度はビットコインの価格が急落し、「ビットコインのバブルが弾けた」「仮想通貨は終わった」という見方が世の中で多数を占めるようになりました。そうした見方は、本当に正しいのでしょうか?
私は1999年にSBIグループを立ち上げて以降、オンライン金融の最前線で金融サービスを提供してきました。フィンテックやブロックチェーンが登場してからは、積極的にSBIグループへの導入を継続しています。その結果、例えば、国内の有力な多くの金融機関と共にSBIリップルアジアが事務局となり「内外為替一元化コンソーシアム」を立ち上げて、世界の金融機関の先頭に立って、国際送金の仕組を抜本的に改革することを目指しています。
また、2018年に入って、国内初となる仮想通貨を含む決済用コインのオープンプラットフォーム「Sコインプラットフォーム」を構築すると共に、新たに仮想通貨の取引所を開設しました。これまで積み重ねてきた金融サービスや、最先端技術の導入によって培ってきた知見を基に、これから金融の世界がどう変わって行くのかについて、私なりにイメージはできています。
ごくシンプルに言いましょう――これから金融の世界では、仮想通貨とその基盤技術であるブロックチェーンによる“革命的”な変化が起きます。それに伴い、私達の日常生活も劇的に変わるでしょう。
実は、社会のキャッシュレス化や銀行消滅の可能性と、仮想通貨の動向とは全て繋がっています。仮想通貨は“終わる”ことなく、徐々に市民権を得て行くでしょう。それには、機関投資家の本格的な参入や実用化に向けた国際的な取り組みの加速、国内では統一的な業界ルールの確立といった幾つかの条件が揃うことが前提となりますが、時間の問題です。
大事なことは、仮想通貨を支えるブロックチェーンは、様々な分野で応用され、個人と個人、あるいは個人と企業が直接「価値の交換」ができる社会を実現すると予想できることです。その時は、恐らく銀行や証券会社といった金融機関だけでなく、現在インターネット上でプラットフォームを提供している会社等、価値の交換を仲介している旧態依然とした会社はなくなっているかもしれません。
仮想通貨による革命は、それ程のインパクトを持っているのです。現在、金融の世界で起きている変化は、そうした将来の大変化への第一歩です。1990年代、インターネットが普及するにつれ、多くの人が大きな技術革新の波が起きつつあることを実感したと思います。もしかすると、仮想通貨とブロックチェーンが起こす技術革新の波は、インターネットよりも大きいものになる可能性を秘めています。
様々なフィンテックサービスが登場し始めた2010年代初頭は、経済の景気循環で言う所の「コンドラチェフ・サイクル」のスタートに該当しています。コンドラチェフ・サイクルとは、景気循環の中で最も長期の波動であり、約50〜60年毎に訪れるとされています。他のより短い景気循環は、設備投資や建設投資によって起きるとされますが、コンドラチェフ・サイクルは、技術革新が主因となって起きると言われています。
フィンテックとは幅広い概念で、ブロックチェーンだけでなく、ビッグデータやAI(人工知能)、ロボアドバイザー、IoT(モノのインターネット化)といった、夫々が大きな可能性を秘めたテクノロジーも活用されています。それがブロックチェーンと結合して、革命的なサービスを生み出し得るのです。そうした革命の1つの終着点は、仮想通貨が世界通貨として世界中を流通することだと考えています。
私にとってビットコインの最大の功績は、どの国にも管理されない通貨が、基軸通貨、即ち「世界通貨」として存在し得る可能性を感じさせてくれたことです。できれば、私の目で、そうした世界を見たいと願っています。インターネットが登場して、約30年で世界はここまで変わりました。私の願望は、そう無理からぬことではないでしょう。
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