フロリダ州で再集計を受けて、米国の有権者動態を再確認

安田 佐和子

2000年の大統領選を彷彿とさせる事態が、発生しました。

フロリダ州で上院選、知事選ともに再集計が開始したというではありませんか。事実は小説より、いや映画より奇なり。2000年の大統領選における再集計は、セクハラ問題で堕ちた名優ケビン・スペイシー主演作品「リカウントアメリカが揺れた36日間」を生み出しましたが、今回もハリウッドが映画化するのでしょうか?注目の再集計結果は、15日以降となる予定です。

さて、今年の中間選挙を振り返ると、民主党が大金星を遂げブルーウェーブに乗ったとは言い難い。民主党が下院で多数派を握ったものの、2010年にティーパーティー運動が席捲した当時、共和党は63議席増やした半面、民主党は今回の中間選挙で共和党から28議席を奪うにとどまりました。2010年におけるティーパーティー運動の隆盛は、こちらで確認できます。

もちろん、今年は民主党急進左派が台頭も見て取れ、ウィスコンシン州でエバーズ氏がティーパーティー候補で現職のウォーカー氏(共)を破り、プログレッシブの指導者的立場にあるバーニー・サンダース上院議員などは2020年の大統領選に向け、勝利への確信を強めたものです。フロリダ州では再集計に至るほどの接戦となり、ジョージア州でも民主党のプログレッシブ候補が州法を元に再集計を主張するほど善戦しました。とはいえ、テキサス州の上院選では、多額の広告費を投じたプログレッシブの星、ベト・オルーク候補が敗北するなど、共和党地盤での限界が見えた部分も否めません。

投票率の大幅上昇も、民主党の追い風となったか否かは疑問を残します。Elections Projectの試算で今年の中間選挙の投票率は47.5%と、過去最低をつけた2014年の36.7%を超え1966年以来で最高となったようですが、共和党の間でも投票所に足を運んだ有権者が増えたと考えられるためです。。

では、ブルーウェーブに残された課題は何でしょうか?ピュー・リサーチ・センターの世論調査結果を紐解くと、2016年の大統領選と同じく、白人、特に高卒以下白人男性の取り込み不足が浮き彫りとなっています。


(作成:My Big Apple NY)

これだけ非白人で民主党支持が多ければ、民主党が大勝してもおかしくないように見えますが、そこはやはり人口が違います。こちらをご覧下さい。


(作成:My Big Apple NY)

白人がマイノリティに転落する時期が取り沙汰されるなか、米国勢調査局はその時期を2045年と推測しています。2045年の白人の比率は49.7%となる見通し。以降は白人比率がガクンと下がり、2060年には44.3%へ落ち込む見通しです。これは、男女別でもほぼ変わらず、白人男性は2017年の61.4%から2045年に49.7%へ低下し、女性も同じ年に49.8%とマイノリティに転落します。


(作成:My Big Apple NY)

年齢別では、高齢化が進むに従い65歳以上の割合が2016年の15.2%から白人がマイノリティに転じる2045年に21.7%へ上昇する見通しです。年齢に従って政治的な見解が保守化すると踏まえれば、65歳以上の人口増加は政治的な潮流を見据える上で留意しておきたい。一方、他の世代は65歳以上ほど大きく変化せず、25~44歳では25%前後を維持する公算となります。


(作成:My Big Apple NY)

もちろん、年齢や人種だけで政治的な潮流を推測できません。ただ、人口や年齢を俯瞰してみると、少なくとも今回においてプログレッシブが潮目を変えられなかった理由が透けて見えるというものです。

(カバー写真:Mike Bloomberg/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年11月13日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。